AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS セリフ覚え陰話

<<   作成日時 : 2006/04/30 12:33   >>

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セリフ覚えが悪い。最近とみに良くない。
年のせいだけではないだろう。人の書いたセリフが耳に入らないのだ。自分の言葉以外、誰の語りも感じ取ることが出来なくなっているのだ。
僕は僕自身しか演じられない。
それなのに僕ではない人間を、要求され、強制されるしか生きる術がない。

先日も、なかなかのセリフの量だった。僕一人だけが、ワンシーンごとに十行から二十行くらいしゃべらされた。
まあ、いつものことだ。
別にリーダー役が多いわけではないが、僕の女優に対する道具は、バイブでも鞭でもマラでもなく、僕の説明なのだ。
ストーリーの、シチュエーションの、それこそ相手のキャラクターまでをも僕が一人で説明する。
どういう場面で、どんなタイプの女の子が、どのように責められてゆくのか。
導入であり、背景であり、煽りであって、もうそれ自体が加虐と化す。
見る側を興奮へ誘い、見られる側を苦痛へ追い込み、僕の存在そのものが淫蕩なドラマを背負う。
女優とハメない時の僕は、性の司会者でしかないのだ。それは僕みたいな悦楽のプロレタリアートにとって、不本意なものであることは、間違いないのだ。

長セリフを覚えるには、とにかく繰り返して暗唱するしかない。
本当なら舞台俳優のように人目もはばからず大きな声を出して読み上げるべきだろうが、僕はどうもこれが苦手だ。
恥ずかしいというのもあるが、たとえトイレや空いた部屋で一人になっても、大きな声がほとんど出て来ない。
僕は声が透ると言われる。喝舌も悪くないと思われている。
だが、それは本来の僕ではないのだ。
実際の僕は響き渡る声などほとんど出さない。自分の耳にさえ、はっきりと聞こえるように普段からしゃべれていない。
つまりボソボソのモゴモゴの、ブツブツ口調。
自信がなければ大きな声で人はしゃべれるものではない。
僕は力のある側、支配する側に君臨している役がほとんどだが、それは確実に僕の現実とはほど遠い。年々、その距離は広がっておぞましいほどに果てしない。
だからセリフ覚えが悪くなったのだ。声に出して読めず、頭にも体にも入らなくなってしまったのだ。
僕は自信満々の人間で、あるはずがない。
堂々と己の言葉を謳い上げる、権力者にはなりえない。

結果、僕のセリフは完璧ではなくなる。いつもいつも、どこかしら抜かして、無様な様相のまま何とか誤摩化しているだけにすぎない。
多少とも言い換えないと覚えきれないのだ。
そのくせ全部を自分流のアドリブに染め上げる才能にも乏しいのだ。
俳優、特に映画スターと呼ばれる人には二種類のタイプがある。
「セリフなんか覚えなくていい!役に成り切れ、そうすればセリフが出て来る」
という天才派(例えば勝新太郎)。
「とにかくセリフを丸暗記しろ。後は何とかなる」
という生真面目派(例えば市川雷蔵)。
僕はその両方ともに駄目なのだ。
役に成り切る感性も、セリフを丸暗記する勤勉さも、僕には決定的に欠けているのだ。
言い換えも中途半端。本番一発に賭ける集中力もどこか散漫。
僕が中途半端な人間だからだろう。生と死をあっちフラフラ、こっちフラフラして迷妄のままに生き長らえているからだろう。
僕は俳優ではない。
AVの中でかろうじて、生を繋がらせてもらっているだけの、無能なハイエナでしかない。

それでもこの頃考える。
世間からも人付き合いからも、女からも孤絶してきた僕が、今だAVだけからは見捨てられていない、という事実。
これはもはや、AVの中の僕にしか価値がない、ということか。
AVで与えられる役柄だけが、僕に認められた現実なのか。
いや、AVで要求され、強制される役目こそが、僕という人間の偽りのない真実なのか。
僕はそこから逃げ腰でいる。
自分の本性から目を背けようとあがいている。
かつての僕はどんな非道な役も避けようなどとしなかった。割り切りも開き直りもなく、確信犯の気分で鬼畜に徹した。
つまり僕はそこまで弱くなったのか。
それだけやはり、若さを失い、野垂れ死にの進軍に怯えている老醜なのか。
日常の僕と、AVの僕。
プライベートの僕と、極悪の僕。
愛を切望する僕と、性を蹂躙する人でなし・・・。
僕は答えを出したくない。
どちらの自分にも、僕は心底、許しを与えていない。

たかがセリフ。たかがAV。たかが人生。
その通りだ。
僕は自嘲しながら、明日もまた覚えきれないセリフと、みじめに格闘するのだ。
サオ師ではない、AV男優。
男ではない、孤独の棄人・・・。
どうせ僕には自分のセリフを産み出したり出来ない。
自分という役など永遠に分りやしない。
僕は毎日、何のために、一体何を、誰を求めて、演じるふりを続けているんだ・・・。




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