AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS AV女優林由美香の一本

<<   作成日時 : 2006/01/31 19:17   >>

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林由美香について書く。
それは「ジーザス栗と栗鼠スーパースタースペシャル 林由美香」(90年 監督安達かおる V&Rプランニング)について書くことである。
僕にとっての林由美香は、これ一本だけだ。僕のAV女優林由美香は、十五年前の、ままなのだ。

由美香、とあえて呼び捨てにさせていただく。
彼女とはほとんど最初から互いに呼び捨てにし合っていた。それくらい人懐っこく、分け隔てのない子だった。
最初の出会いはこの年の一月。あの「糞尿家族ロビンソン」(V&Rプランニング)の現場でだった。絡みはまったくなく、酔っぱらった妹役の由美香に、嫁とのファック中、「アーニキィ、しっかりしろ!」とケツを蹴られた。トホホ・・・。

そして四月には、いきなりジーザスである。
この後、ロビンソンシリーズ二本と、企画物二本で共演するのだが、大した記憶はない。
僕の林由美香はジーザスだけで充分なのだ。この作品でのみ、僕だけの林由美香が息づいているのだ。

と言っても、正直、彼女にジーザスは似合わなかったような気がする。当時も今も、その想いに変わりはない。
彼女は開けっ広げで、キャピキャピした子だった。同時に優しく気のつく、思いやリのある子だった。
ジーザスなど自分が一番ヘトヘトになる立場だというのに、スタジオの隅、掛け布団なしで寝ていた僕に「寒くない?」と言ってくれた。当時から女優然としたところがなく、皆で作品を作っていこうとする姿勢が明るく元気にみなぎっていた。
プロ意識というより仲間意識。
一人でも落ち込んだり、疲れてたりすると気になって仕方がなくなる、心の暖かさ。
だから彼女が自らあんな過酷な現場に挑むことはなかったのだ。
元祖女優イジメの確信犯的な企画にハマってみせることなど、全然なかったのだ。
彼女をイジメたくなるAV業界人なんて誰もいなかったろう。林由美香が、徹夜の三十時間ノンストップ撮影に音を上げて泣きわめく姿なんて、誰も撮りたくなかっただろう。
彼女は、”泣きのジーザス”、”AV女優の墓場”に、なぜか迷い込んだ。
つまりあの作品は、何かの冗談だったのだ。
林由美香はその後もずっと、本当にずっとAV女優であり続けた。十五年近くもAV女優として、スーパースターとして生き続けた。
ジーザスは彼女のものではなかった。林由美香が、彼女の仲間達に、男優に、スタッフに、AVファンに、捧げたオマケだった。彼女を愛したすべての人々のための、純心な、サービス満点の、シャレたオマケであった。

だが、彼女をイジメたAV野郎がたった一人いた。林由美香を徹底して泣かせた鬼畜男優が、やっぱりいやがった。
この僕だ。

ロン毛教師が、喫煙しただろうと疑いをかけて、イタイケな女校生をいたぶる。
僕は彼女を泣かせた。林由美香は本気で泣いた。頬を引きつらせ、瞳を泳がせ、肩を震わせ、血の気の失せた真っ青の顔で、全身で、病んだ興奮状態に追い詰められた。
あんな泣き方は、彼女にしか出来ない。今にも身投げしそうな、極限の悲痛と慟哭。
暗くてきびしくて、あまりにも無惨な弱者の運命。
被虐美などカケラもない、冷血な暴行図だった。ケダモノに蹂躙された哀れな迷い児だった。
具体的にどんなことをしたか、すでにその日、僕はほとんど覚えていなかった。ただ彼女の永遠の発作のような痛々しい泣き顔だけが、目に耳に焼き付いてしまっていた。
撮影後の僕の落ち込みようは、ハンパではなかった。このまま首を括ろうかと思うくらい、凄まじい自己嫌悪、いや自己憎悪に襲われてしまった。
何てことをしたんだ。
何て、ひどいことをしちまったんだ。
死ね、死ね、お前みたいな人ピ人は、お前みたいな人でなしは、とっとと死んじまえ!
延々頭の中で木霊していた。己を責め立てる罵詈雑言が、狂い出したくなるほど、耳の奥で七転八倒していた。
帰りの電車は這うようだった。ボロボロの敗残の末に、やっとの想いで自室に逃げ込んだ。それからどうしたか、何も記憶にない・・・。
AV男優歴十七年、最大のトラウマになった。
二度と振り返りたくない、しかし決して忘れてはならない、男優である限り背負っていかなければならない、そんな痛恨の現場だった。
だからこの作品を見るのも十五年ぶりだ。本当は永久に、見直すつもりは、なかった。
逃げ、ではない。
僕の心には、何度となく、繰り返し、生々しいまでに突き付けられてきたから。
これが、お前だ。お前はこんなことをしてきたんだ。
こんなことをして、お前は誰に、許されると言うのだ!

けれども、月日というものは、残酷なものだ。
僕は十五年ぶりに見た。林由美香を嬲っている自分を見た。ジーザス唯一のサディストの、非情な悪業を見据えた。
それは意外なほど、インパクトはなかった。
彼女の悲惨ぶりは確かだったが、強烈に響くほどのものは感じられなかった。
この程度のことだったか・・・。
いや、嘘だ。
僕は目を反らしているんだ。過去のものとして、受け入れるべき凝視から姑息にも逃れているんだ。
僕は所々早送りした。彼女の硬直した泣き顔を無音の流れに消し去ってしまった。
卑怯な自己検証だ。まやかしの憐憫だ。
ただ、こんなことが出来るのも、彼女が林由美香だったからかもしれない。
彼女なら、こんな体たらくも、しょーがないねー、と許してくれるかも・・・、と。
「ツジマルって百八十度変わるから・・・」
カットがかかって第一声がこれだった。
彼女は辟易しながらも、こんな加減も知らぬダメ男優を、見逃してくれた。
それ以来、僕はずっと彼女に甘えているのだ。
彼女なら大丈夫だろうと、勝手に無罪放免を決め込んでいたのだ。
彼女は、林由美香だから。
そして僕以外の多くの業界人もまた、彼女のことをそう思い、十五年も林由美香に甘えてきたのだ。
彼女は、黙ってそれを受け入れた。
そして、ふいに、我々の前から、姿を消した。

僕はAV女優の林由美香しか、知らない。
彼女の映画も、テレビドラマも、ドキュメントもフーゾクも全然知らない。
僕の林由美香は、ジーザスの由美香なのだ。
受難に生きた、無邪気にはしゃぐ、場違いな、優しさ溢れる、例外のスーパースターなのだ。
僕は十五年間も、そしてこれからも、彼女に甘ったれて、シコシコと生きていくのだろう。
僕は通夜にも葬儀にも追悼の場にも一切出席しなかった。
「冷たいねぇ・・」ある業界人に、こう言われた。
その通りだ。僕は冷たい人間なんだ。薄情な奴なんだ。
だから彼女の暖かさが懐かしいんだ。会わせる顔もないくらい、彼女の魂が、愛おしいんだ。
こんなデタラメな哀悼の想いで、勘弁してくれないだろうか。
思い出の一本さえ今だマトモに見られない、卑小な”新・素人変態男優8人”の生き残り。
しっかりしろ!
返す言葉もなく、僕はまだイき損ねていやがるんだ。














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