AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 廃虚への隠居道

<<   作成日時 : 2005/09/08 20:40   >>

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時々廃虚で撮影することがある。元病院、元学校、元工場、元ラブホテル、元ドライブイン、元老人ホーム・・・。冷暖房が不十分なのと埃っぽいのを除けば味気ない一軒家スタジオよりはずっと好きだ。何やら人間の空気がある。塗り込められたような無言の歴史が匂う。そして何より滅びのムードが嫌が応にも漂っている。名も無き者が夢の跡。敗残の空虚なるユートピア。居心地の良い透明感に、朽ちかけた己が身をいつまでも浸していたい。

昨日は定番の元病院だった。二次使用スタジオとしては最もポピュラー。そんなに病院って頻繁にツブれるのか、は理解の外だが、ここまでアチコチ訪ねていると、もう驚きも疑問も湧いてこない。
昨日は何と四階建て。最寄り駅からほんの三分。看板なんて当時のまま。大胆なのかいい加減なのか、はたまた元院長は夜逃げなるか?

取り壊し途中のままの、コンクリ&骨組み剥き出しなんてスタジオもあるが、こちらは気味悪くなりそうなほどの現状維持。受付なんて明日からでも営業できそうなくらいの整然さ。診察室に手術室、レントゲン室まで完璧に殺菌消毒し上がったような冷んやりリフォーム。
よく見るとさすがに細かい医療器具類とかが少ない。ところどころスポスポと唐突な空きが覗く。壁の人体図やポスターなどのクスミが、日頃の清掃による清潔さだけでは隠せない時間の停止をさらしてみせる。
ガランとした入院ベッドのみの白い部屋は、まさにスッピンの無防備さだ。もう長いこと誰もいない使い回し寝室の掃き溜め。布団や毛布が全部灰色がかって見えてしまうのは、まるで陽光差し込む安置室。
使用不可の物置き部屋に山と積まれた医のガラクタ。水も電気も届かなくなってる暗い廊下の鍾乳洞。
そんな近くに必ずあるのが、PRIVATEとか書かれた管理人部屋。
これより先は行き止まりなんて、そんな病院あるはずない。

ここは今やスタジオだ。控え室が診察室。カメラが回ってるのが手術室。院長室がメイク室。
悲しいものじゃないか。
ここで何人の人が救われ、どれくらいの人が泣いたのか。どんな病原菌が退治され、何歳くらいの人が死んだのか。
もちろん病院だって今の我々と同じプロの仕事場だ。ビジネス中心の競争舞台だ。
病気も怪我も死にいたっても、厳粛だけでは片付かない。貨幣社会による商売基本という冷徹な宿命。
AVだって性を扱って売買する以上、好色な下心だけでは成り立たない。移り気なユーザーの興奮に的確に応えるだけのエンドレスな探究、飽くなき真剣な創造姿勢。
そうは言っても、痛苦の医術と、悦楽のAVとでは、やはり比べるのも落ち着き悪い。
まして、社会的にはどちらも必要不可欠、と言い切りたいところながら、絶対確保の病院が廃れ果て、必要悪の我々AV界が現在を牛耳っているとなると・・・。

病院も経営を母体にしていれば解散は自然なこと。
わかってはいるが、しかしここにも数多くの血と涙とため息と、そしてなにより命の燃え殻が浮遊し、砂のようにうずまみれているかと思うと・・・。
悲しいのだ。やるせなくなるのだ。
どんなに深淵で過剰な性も、肉体が滅びたら、そこでオシマイ。
どれだけ性に没入したとて、しょせんは生の経過であって、終局の先は普遍の逝去。
かなうはずもない。次元の違うお手上げ真理。
確かに病院が先に死んだ。でも本当に死ぬのは生身である我々だ。生きるために性を作り、売りまくっている我々の方だ。
病院は消えるだけ。たとえ完全な廃虚から倒壊の末の更地になろうとも、なくなってしまっただけ。
人は、死ぬ。だが、焼かれて骨となって地の底に沈められてしまおうと、死そのものがなくなるわけではない。
死は残る。誰かの心に、様々な歴史に、時間の彼方に、永久に消えることなく居残ってしまう。
残りたくもないのに。悲しすぎるだけなのに。

マンションスタジオなら誰でも住めるだろう。
でも、ここには住めない。
ただ住むのではなく、籠っていたい、などと思うことがたまにある。
廃虚は廃虚でも、ここはかつて文字通り、死への入り口だった。良くも悪くも死と隣り合わせに満ちた不動の場所だった。いや、今でもなお。
ならば僕みたいな卑小な人間をさらに無力にしてしまえる、都会の離れ家では?
静謐な畏怖を秘めた、無造作な別館なのでは?

こんなところに籠りたい。あらゆるものに背を向けて遁世したい。
隠居願望。四十過ぎてからの僕の持病だ。

AV、いやADがやって来る。もうすぐ出番だろう。
まだまだ究極のお迎えとはいかないらしい。
廃虚巡りも要するに、隠居への回り道のようだ。長い長い、寄り道だらけの落ち犬遍路。
お札(ふだ)をもらいに、シャワーでも浴びるとするか・・・。






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