AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 私は私!文句あるか?!・・501遺文D

<<   作成日時 : 2014/09/17 19:26   >>

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私は私、みんなとは違うの。これやらないと生きていけなかったんだ。




単発TVドラマ「青い花火」
制作NHK 98年11月28日放送
作・鎌田敏夫(資料提供・永沢光雄) 演出・若泉久朗
出演 桃井かおり 松尾れい子 岸部一徳 伊藤景衣子 黒川よし佳 谷本一 夕樹舞子 長坂しほり 松田千奈 林由美香

加藤玲子(桃井かおり)はAVメーカーの女編集者。四十代の独身である。
玲子「監督があらかじめ編集したデモテープを、さらに編集して完成品を作るのが私の仕事。デモテープには全てが露出している。見せてはいけない部分に、俗に言うボカシというモザイク模様を入れていくのも、私の仕事になる。この仕事を始めてから、五年経つ。五年間、私は毎日、剥き出しにされた男女の裸体を見つめ続けてきたことになる」
一人、編集室でモニター画面に向き合っている玲子。傍らには酒の入ったグラス・・・。
そこへメーカーの社長兼監督の矢島(岸部一徳)が入ってくる。グラスを気にする。
玲子「・・うん、何?・・・シラフでやってられる?」
矢島「飲みながらでも出来る、いい仕事だと思ってほしいねぇ」
玲子「男と女のアソコを毎日毎日見てんのよ、いい仕事だといえる?」
矢島「思えよ」
玲子「私、あんたと違うからね」
矢島「俺はお前をひどい仕事に引きずり込んだなんて思ってないんだからさ」

98年、僕は男優とインストラクターを掛け持ちしていた。気分的にも肉体的にもインストに入れ込み、ちょっとしたアスリート気取り、あるいは格闘パフォーマーにハマる真似事の日々を送っていた。
現場を終えて、その体のまま一般女性達に空手やキックを手取り足取り教えていた。本番の後で、殺陣の舞台やアクションをこなしていた。硬軟両派で僕は僕なりの仕事をしていたのだ。そんな日々をまったくシラフのまま、当たり前に過していた僕は、とっくにモザイク処理されるような人間であったのだろう。

矢島の率いるAVメーカーはなぜか女子社員が多い。真紀、千秋、そして鈴木。
昼間、仕事中にかかってくるユーザーからの電話。
応対した真紀にバストサイズを尋ね、笑って切られる。
真紀「ヒマな奴が多いねぇ」
鈴木「ガールフレンドもいない、男の友達もいない、AV会社にイタズラ電話するしかない男が大勢いるのよ、それを思うと寂しくなってきちゃう・・」
千秋「でもそれがウチのお客だもん」
鈴木「アタシさぁ、いつも思うんだけどさぁ、若い男がウチのAVなんか見て、女ってあんなに簡単に感じるもんなんだって、思ってほしくないのよねぇ」
千秋「当たり前じゃん」
鈴木「セックスってそんなに単純なもんじゃないでしょう?」

僕は37歳だった。ガールフレンドもいない、男友達もいない。イタズラ電話しようにも、そこが僕の食わせてもらっている業界だったのだからシャレにもならない。
現場で簡単に?感じるAV女優は沢山いた。どの絡みも、極めて単純なものにしか見えなかった。
インストのくせに。女性の生徒の方が多かったぐらいのくせに。
僕はトレーニングの帰り、よくレンタルしていた。
自分の出ていないAVを。
やりたくても誰にも、どこででもやらせてもらえない、そんな内容のAVを。
僕は寂しく、そしてヒマな、もう若くもない男だった。

新作一本編集を終えた玲子がやや千鳥足で入ってくる。
鈴木「監督、加藤さん、いつも飲んでるけど大丈夫なんですか?」
矢島「アイツはアル中にはならねぇよ。アル中になる奴ってさ、人に対する甘えがあるとかって言うだろ?誰かに依存したりとかさぁ。アイツはそんな甘い気持ちゼロなんだよ。泣いたことないんだよ、あの年まで」
玲子も元はただのOLだった。
玲子「30を過ぎた女がOLをやっていくのは辛いものがあって・・・」
携帯電話片手の人々にまみれて、夜の駅を歩く玲子。
玲子「駅ではいつも大勢の人間が電話にしがみついている。みんな、誰かにコンタクトをとろうとしている。会いたい、というコールを送り続けている。私には会いたい、という人間がひとりもいなかった・・・あの時誘われたら私はどこにでも行ってただろう・・・」
五年前、OLを辞め、電車の中で窓をずっと苛立たし気に叩いていた玲子に声をかけたのが、幼馴染で従兄弟の矢島だった。久しぶりの再会だった。彼は玲子を自分の家に連れて行った。
玲子「危ない境目にいる私を見たのだと言う。矢島は救ったつもりでいる。でも私には今の仕事が自分を救うとは思えない。一日中裸のテープを見て、ほろ酔いで家に帰る。私の毎日はその繰り返しだ」

僕は今も昔も酒は飲まない。
だのに人に甘えたがる。依存したがる。でも、それがまったくの甘い気持ちであることも嫌というほど知り尽している。
泣いたことがない。
誰かの前で。
会いたい、と切実に思えるような、誰かの前で。
本当に誘ってくれたらどこにでも行ってしまったかもしれない。
それで救ってもらえるのなら。泣かせてもらえるのなら。
現実は・・・ひとりで動いて、ひとりで鍛えて、ひとりで教えて・・・ひとりで腰を振って、ひとりで罵り続けて、ひとりで射精して・・・。
何をしていても一日中ひとり。
毎日がその繰り返しだった。

真昼のAVメーカー内。
私、この年で葬式に10回以上出てると、雑誌のインタビュアーに笑って自慢しているAV女優。
そのほとんどが友達で、シンナー中毒やら首吊りやら・・・と。
隣では過去にこのメーカーに出演した女優の父親だと名乗る背広姿の中年男が沈痛な顔で座っている。
お宅の娘がAVに出てると匿名の電話を受けたので来た、と。絶対にそんなこと認めたくないと言わんばかりの険しい表情。
女優「バカじゃないの!」
父親「何がバカなんだ!」
女優「泣いてどうなるってもんじゃないんだよ」
父親「お前達は、カネさえ貰えば何でもするのか?カネで体を売って平気なのか?!」
女優「アンタらだって会社に人生売ってんじゃん!魂売ってんじゃん!!」
ネクタイつかんで食って掛かり合う二人を冷やかに見つめる玲子・・・。

あの頃もそう言う輩はいた。たった一本出て、サラリーマンの給料ひと月分も取るとは、けしからん!撮影でセクハラ攻撃をお見舞いしてやる。俺様のチ●ポは女房子供を養ってる偉大なチ●ポであって・・・。
メーカーにエロ業界に、人生を魂を売っている中年男が、そう吼えて、AV女優に顔シャしていた。
AVに体を売る。
カネさえ貰えば何でもする。
今だって変わらないだろう。
ただ、喧嘩なんてしなくなったという程度で・・・ひと月分貰うのも容易ではなくなってしまったというくらいのことで・・・。

社内でボヤくアダルトOLふたり。
鈴木「でもさぁ、最近テレビなんかで少子化とか言って、産めよ増やせよ!みたいなこと言うじゃない?あれ聞くと頭にくるのよねぇ」
真紀「どうして?」
鈴木「ウチに来る子なんか見てるとさぁ、偏差値で輪切りにされてよ、自分の将来を決める自由を奪われて、将来の夢を持つことも出来なくて、どこにも行き場所がない子がほとんどじゃない?子供を思いっきり不幸にしといて、何が産めよ増やせよ、よ!子供を労働力としか思ってないのかっつうの!私はそんな国で子供なんか産まないわよ!」
そこへ出演応募の若い女(松尾れい子)が入ってくる。
玲子が応対すると、そのどこか硬質な雰囲気の娘は面接表にNG無しと淡々と記し、お金がいるんです、と動機を語る。
自分から直接来る子は珍しいと言う玲子に、彼女は将来自閉症児のセラピストになるための留学資金稼ぎに来たのだと答える。
特技はピアノというその娘は、「彩佳」と芸名をつけられた。
けれど玲子は見逃さなかった。彼女の右手の甲にまだ生々しい咬み痕(タコ)が残っていることを・・・。

10年以上経って今だ穴開きスキンをどうとか言うセンセイもいる。
将来どころか食うことさえ困難?
夢?自由?
今では労働力でさえない。
ただの弾除け?捨てゴマ?
死ねよ殺せよ、何とかのために・・・。
NG無しの女優は決して珍しくなかった。
ドキュメント物には格好のキャスティングだった。
硬いムードの、セラピストにはとてもなれそうにない、ただお金だけは必要というような若い女の子・・・。
痕も多かった。
痕もつけられた。
何のために産まれてきたのか、そんなことを考える僕がいて、考えさせる子たちがいて・・・そんな時代だった。

玲子の部屋。矢島が来ている。
その部屋には電話がない。今時、そんなウチないぞ、引けよ、という矢島に、だってかける人なんていないじゃない、人のために電話入れたってしょうがないじゃないと玲子は答える。
そして玲子は彩佳について尋ねる。
矢島「どうしたの、珍しいじゃない、他人に興味持つなんて」
玲子「別に・・・あの子のセックスシーン、モニターで見たくないって思っただけ」
矢島「どうして?初々しくて、可哀想で見ていられないか?そう見えてもさぁ、今の女の子は結構ふてぶてしいんだよ。モニターで見て、お前知ってんだろ?」
矢島は玲子に負い目があった。
幼い頃、母親に虐待されていた生傷だらけの玲子から矢島は逃げたからだ。
矢島「俺、怖かったんだ。親がさ、自分の子供にあんなひどいことするなんて信じられなかったんだ。ウチのお袋からさぁ、お前が高校出て就職するまでオネショしてたって聞いた時に、あの時俺が止めるとか誰かに訴えてたら、お前がこんなことにならなかったんじゃないかってそう思ったんだよ」
玲子「やめてよ・・・肝心な時には逃げて、後になって責任を感じる、アンタ達の年齢の男の一番嫌なとこだね」
矢島「俺がねぇ、お前をウチの会社に呼んだのは、お前みたいな人間が世の中にはいっぱいいるってことを知ってほしかったからだよ、愛情いっぱいで育った子はウチには来ねぇよ。今の子はさ、小さい時から追い立てまくられて、それが嫌で立ち止まったらもう居場所はねぇんだよ。どこにも居場所のねぇ奴がウチに来るんだよ。そういう奴の気持ち、お前が一番よくわかってやれるんだろう?」
玲子「・・・」
矢島「人と関わらないと一生泣けねぇよ・・・あの子を俺から奪ってみろよ。AVなんかに出るなってそう言ってやれよ」
玲子「・・・・」

僕も携帯電話を使いだすのが、かなり遅かった。当時からすでに仕事は少なかったし、かける人もいないし、人のためになんてやっぱり・・・。
初々しくて、可哀想で、でもふてぶてしくて・・・だから?ふてぶてしくて。
僕もそう、男はみんな逃げる。
傷だらけの女からは、結局逃げる。
肝心な時には逃げて、後になって責任を気取る。
その年齢になれば男なんてみんな・・・。
やはり変わらないのだろうか?
愛情いっぱいに育った子は来ない。
居場所の無い子しかいない。
それも男共が、要するに牡なんて野郎が・・・。
誰だって、好き好んで泣きたくなんかない。それを泣け、と言う。それが人生だと言う。泣かせてる側が。やらせてる連中が。
AVなんかに出るな。
誰に言えるのだろう。
誰なら言えるのだろう。
誰ならそう言って、一緒に泣いてあげられるのだろう?

彩佳の初現場。
メイクを終えた彩佳に玲子が尋ねる。
玲子「その手、吐きダコ?拒食症だったことあるの?」
彩佳「・・・」
玲子「食べて吐いていっぱい詰め込んでまた吐いて、吐く時ノドに指突っ込むから歯が当たってタコになるのよね」
彩佳「どうして分かるんですか?」
玲子「・・・私にもあったのよ、それと同じの」
彩佳「・・・」
玲子「吐いて食べて、吐いて食べて、吐いて・・・家出て三十になるまでずっとその繰り返しよ、大人になる・・」
彩佳「大人になるのが嫌だったんですか?!」
玲子「・・・」
彩佳「母親のような人間になりたくなかった・・・?」

大人には早くなりたかった。
イジメられることはなくなるから。
そう理由もなしに信じ込んでいたから。
現実はもちろん違う。
大人になってもやっぱり吐いた。イジメを吐き、また食べ、また吐き、吐いて食べて吐いて食べて・・・。
誰のような人間になりたくなかったのか。
今の僕みたいな大人。
僕に吐かせた大人。
それでもまた死ぬまで懲りずに食べようとする、そんな大人?
女優だって今も吐いている。
誰も気がつかないだけ。気がつきたくない、それだけ。

そして撮影開始。
いきなりのレイプシーン。泣き叫びながら迫真の演技?で抵抗する新人女優を追うマイク、ライト、カメラ。
平然とモニターを見つめる矢島、玲子、ヘアメイク・・・。
ワンシーンを無事終え、余裕でお菓子をつまみながら休憩している彩佳に玲子は言う。
玲子「ねぇ今のうちにやめなさいよ。アンタ、絡みって何するか分かってんの?みーんなの見てる前でセックスをするのよ!」
彩佳「・・・」
玲子「自閉症のセラピストなんてそんな簡単になれるわけないじゃない・・・」

絡みとは人前でのセックス。
それは、簡単に資格などとれないような頭の悪い人間のすること?
今でもこう断言する輩はいる。
分かってやってるとか、頭のいい悪いとかに関係なくやるとか、そんな子、絶対にいるはずがない!そう言い切る資格職業人が必ずいる。
モニターの中も外も人は、それが当たり前だ当然だ間違ってるはずないじゃない・・・と平然としている。

いよいよ本番撮影。
矢島「説得出来なかったのか?ライトに照らし出されて輝いて・・今の子はあれだな・・・本当の意味で人から大事にされたことがないんだよな・・・」
玲子は無言のまま、スタッフからの人払いに従ってスタジオの外へ出る。
彩佳のセックスが始まる。
抗うような、溺れるような、自分を見下ろしているような・・・歯を食いしばり、酔うような、どっぷり沈んでしまうような・・・苦し気に。
矢島「顔・・・胸・・・引いて全身・・・いいよ、そのまま、ぐぅっと回ってていいよ・・・」
そして、はいカット・・・グッド・・・。

本当の意味で大事にされること、それは誰でもない、自分で決めることではないのか。
AV出演も、セックスも、撮られることも、見られることも、苦しむことも、耐えることも。
大事にされたい。
大事にしたい。
人はその時、いい存在になれる。
輝いていられる。
人生に照らし出される。
誰が笑うだろう、軽蔑するだろう、無視するだろう。
他人にカットをかけられてもいい。
生きるとは、大事なことだ。
あなたは大事な人だ。

撮影初日終了。
深夜、自宅マンションの屋上にいた玲子へ、矢島から頼まれた弁当を彩佳が届けに来る。
電話がないことを知った彩佳は、黙々と立ったまま食べる玲子に尋ねる。
彩佳「誰とも話したくないんですか?」
玲子「・・・」
彩佳「アタシ・・・結構頑張り屋だったんですよ。小学校の時プール教室ですぐに二級まで上がったんだけどなかなかそれ以上に上がれなかった。隣のエリちゃんだって一級なのにどうしてアンタが上に上がれないのってお母さんに言われて、必死に息継ぎ練習して一週間で一級になったんです。お母さんの喜んでる顔見て凄く嬉しかった。学校だってお母さんの好きなところ行ったし、ピアノだって頑張ったんです。アタシ、いい子にしてたんです」
玲子「・・・」
彩佳「拒食症の治療の時にお母さんを憎んでるって言われて信じられなかった。拒食症って母親みたいな女になりたくないってことから始まるんだって言われて・・・でもだんだん分ってきたんです。自分がお母さんを嫌ってることが・・・」
雨が降り出してもそのまま食べ続ける玲子。
彩佳「加藤さんて誰とも関わりたくないって本当なんですね」
一人残り、雨のやんだ夜空を静かに見上げる玲子・・・。

いい子になりたい。
みんなそうだ。
母親にとってのいい子。学校にとってのいい子。会社にとってのいい子。業界にとってのいい子。世の中にとってのいい子。国にとってのいい子・・・AVにとっての、いい子。
いい子は結局、拒食症になるのだろうか。そして全てを嫌うのだろうか。
お母さんを、学校を、会社を、業界を、世の中を、国を・・・。
引退した女優に訊いてみたい。
AVが嫌いですか?
今では、いや今でも嫌ってますか?
AV女優みたいに、もうなりたくないですか?
それとも・・・誰とも話したくないですか?
AV業界とは、もう誰とも関わりたくないですか?
そんな風に強いるのは、一体どこの誰なんですか?

翌日、メーカーで鈴木に初絡みの感想を訊かれる彩佳。
思ってたほどどうってことなかった、と答えた彩佳は、ここ長いんですか?と尋ねる。
何度か辞めようと思った、でもそのうちにね・・・と鈴木。
鈴木「ここへ来る人って皆寂しいんだなってことが分かってきて・・スタッフもそう・・みんなどこかうまく生きれなくて、その寂しさを抱えてここに来るんだなってことが分かってきて、やめられなくなっちゃったのよ!」
彩佳「・・・私はそんなヤワな理由で来たんじゃないです」
鈴木「えっ?」
彩佳「さみしくなんかないです。アタシはもっと強いんです!」

寂しい人間の集まり、そうかもしれない。
どんなにパブ全開でも、顔出しOKでも、全国的に有名でも、カリスマと持ち上げられても・・・いつ何時でも、いかなる場所でも相手でも、包み隠さず自分のやっていること、やってきたこと、それを全て明かせる人間などいるだろうか?
好きなことをしようとするのは、寂しいことだ。
それが嫌いな人々から差別されてしまうから。蔑視の扱いを受けるから。
うまく生きようにも、元から世の中が許してくれない。
強くなろうにも、本当に好きで何かをやっている人間なんて、強くなれるのかどうか。
好きも嫌いもなく、それしかない、そうするより道はない、それをすることだけが己に与えられた業。
本当にさみしくないのは、本当に強い人間とは、そう胸を張れるのは・・・彼女たちだけかもしれない。

撮影二日目最終日。
初AVでこんなことまでするかね?と囁くスタッフを背に、濃い化粧を施され、妖しい照明の元へ向かうAV女優彩佳。
玲子はまたスタジオの外。
のけぞる彩佳、にらむような彩佳、汗まみれの彩佳、咆哮する彩佳、全身で絞り出すような彩佳・・・。
雨の元、傘をさして一人煙草を吸い続ける玲子。
お疲れ!の声。
眼光鋭く、足早に、何かに挑むようにベッドを後にする彩佳。バスタブに頭までつかって泡に沈むAV女優・・・ひとり。
帰りの車中。
矢島「彩佳ちゃんさぁ、みんな優しいだろう?我々の世界はさ、スッポンポンの世界だからさ、隠すもの何もないからさ皆、自分を飾る必要がないんだよね、彩佳ちゃんがそのカメラの前で、全てをさらけ出してさ、恥ずかしさを乗り越えてそれをさ、みんなが共有して、精神が解放されるんだよね、だから彩佳ちゃんを輝かせたいとかそういう・・・」
玲子「そんな立派なことしてんだったらさ、ウチ帰って女房子供にさ、俺こんな仕事してんだって自分の撮ったビデオ見せなさいよ。アンタのやってることはね、バカな女を裸にしてセックスさせてお金儲けしてるだけじゃないの?停めて」
一人車を降りて夜の街へ消えるAV編集ウーマン・・・。

みんな優しいわけじゃない。
優しそうにして、そうでない場合もいくらだってある。
隠すものはない?
色んなことが隠されている。
実態、事情、本音、痛いところ・・・。
飾りまくりの世界。
誰も何もさらけ出してなどいないのだ。
恥ずかしいことばかり。
それをみんなが共有して慰め合って、かろうじて解放の気分にひたっていられるのが・・・どこの業界?
バカな女を裸にしてセックスさせて金儲けしてるだけだと言われるのなら。
バカな他人をこきつかって、死ぬほど働かせて、金儲けしてるだけ・・・違うだろうか?
それが、我々の一般社会、この立派な表の世界・・・そうではないのか。
誰か、止めて!

自販機で缶ビールを飲んでいる玲子の前に彩佳が息を切らせて走り寄ってくる。
彩佳「加藤さんて、いつも怒ってるんですね」
玲子「・・・(缶をゴミ箱に投げ捨て、歩き出す)」
彩佳「アタシ、加藤さんと違うんです、加藤さんみたいに自分のこと可哀想って思ってないから。可哀想可哀想ってひたすら自分を可哀想がってアタシそんなの嫌なんです。電話もなくて、付き合う人もいなくて、人と関わりを持つのが嫌で、部屋で体を丸めて・・・」
玲子「私だって、アンタと違って自分で自分を傷つけたりしないからね」
彩佳「アタシは傷なんかつかない!」
いきなり玲子を叩く彩佳。
玲子「なにぃ?!」
叩き返す玲子。歩き出す彩佳。別々の方角へ歩き出す二人の女。
彩佳「傷ついてるからビデオに出るなんて、そんなこと思わないで下さい。さみしいからビデオに出たなんて、そんなこと思ってほしくない」
玲子「・・・」
彩佳「私は加藤さんみたいにうずくまって生きていきたくないんです。私は親なんかいなくても平気なんです。友達なんかいなくても平気なんです。高校の時に私いじめられてたの、生意気だったから、皆と同じことしなかったから。先生も一緒になっていじめるんです。皆それしか楽しみがないんですよ。親も先生も友達も、みんな自分が人を傷つけてることさえ分ってないんですよ。私、アイツらにビデオ送ってやるんだ、これがアタシだ、文句あるか?!ってアイツらに言ってやるんだ!」
玲子「・・・」
彩佳「アタシ、アイツらにビデオ送ってやるんだぁ!!」
叫ぶ彩佳。振り返る玲子。
彩佳「アタシ、アイツらにビデオ送ってやるんだぁ!!」
玲子「・・・」
彩佳「アタシが傷ついてるかどうか、撮ったビデオ最後までちゃんと見ろよ!!!」
玲子「しっかり見て、ちゃんと編集してやるから!どこにでも好きなとこ送りな!!」

いつも怒っている。
そして憐れんでいる。
可哀想可哀想と・・・人と関わりを持つのが嫌で、部屋で体丸めて・・・。
確かに自分で自分を傷つけたりはしない。
強くないから。
色々なものに傷つけられてきたからAVに出ている、その通りだから。
さみしいから、まだAVに出ている。
うずくまって生きている。
小学中学高校とイジメられた。
生意気でもなく皆と同じことだけしようとしたのに、イジメられた。
先生も一緒に。
友達もみんな、楽しそうに。
僕のAVを奴らの誰かは見ただろうか。
誰にももちろん送っていない。
奴らに限らず、嫌いな人間には見られたくない。
憎んでいる輩には見せたくない。
呪ってやりたい誰かには、決して見せない!
彼女達は一体誰に送るだろう?
誰には送らないだろう?
女優も男優も見せる商売。
見られる職業。
でも、男優だって傷つく。女優だって、さみしい。
男優だって弱い。女優だって怒る。
男優だって女優だって、可哀想可哀想可哀想・・・・。
これが私だ、文句あるか?!

彩佳のAVを編集している玲子。
矢島が座る。
矢島「彼女がすすんでやったんだけどねぇ・・・女房に言った。俺の仕事はこういう仕事だってさ、テープ見せた。子供連れて実家に帰っちゃったんだけどさ・・」
酒がないことを問われた玲子は答える。
玲子「私が出たことちゃんと見ろってこの子に言われたのよ」
矢島「・・・」
モニターの中から見返してくる彩佳・・苦悶する彩佳・・浮いてるような彩佳・・涙をためた?彩佳・・・吐きダコの手でシーツを掴み、握りしめ・・・絶叫し・・・放心し・・それでもレンズを見つめる彩佳・・・玲子を見つめる彩佳・・・堕ちていくような、這い上がってくるような・・・ひとりのAV女優の誕生。

ちゃんと見てくれる人は少ない。
あなたを見てくれる人も少ない。
人はなかなか、人からちゃんと見てもらえない。
だから淋しい、だから哀しい、だから痛い・・・。

メーカー内。完成し、商品となった彩佳のAVが積まれる。パッケージの中の彼女はやはり鋭く冷たく、透明な眼差し・・・・・。
宣言通り、自らのAVを次々と封筒詰めしている彩佳。
宛名は、先生、お母さん、友達・・・。
鈴木「本当に好きな人いないの、彩佳ちゃん」
彩佳「いません。いるんですか?鈴木さん」
鈴木「いるわよ、とっても好きな人が」
詰め終えたAVの束を抱えて、「お世話様でした、さよなら」とメーカーを去っていく彩佳。すでに新作の準備に入って忙しい社内では、ほとんどが誰も気にとめない。
だが、玲子だけは彼女を追いかける。
ポストの前でつかまえ、思い止まらせようと声を荒げる。
玲子「ちょっと、待ちなさいよ、そんなことして何になるの?えぇ?自分がバカにされるだけでしょう!」
彩佳「それでもいいんです」
路上に散るAVの山。拾ってポストに投げ込む彩佳。
彩佳「アタシのことが心配?自分と似てるから?」
ポストの前でさらに激しく揉み合いになる二人。それでもポストに放り続ける彩佳。自らのAVを、知っている人間達に送り続ける彩佳。
彩佳「中学の時にね、動作のノロい女みたいな奴がいたんです。その子をいじめたんです、面白いから。ヒロシっと言うの、その子。ヒロシはさ、クラスの奴にバカにされていじめられて殴られて、でもヘロヘロ笑ってた。その顔見ると皆イライラしてさ、もっといじめたくなるの。なんでそんなにヘロヘロしてるんだよって、皆で蹴りつけたりしたの。ヒロシ自殺したんです。学校はいじめなんか無かったってことにしてさ、私いじめたって名乗り出たんです。でも皆知らん顔してた。私高校になっていじめられて初めてヒロシの気持ちが分かったんです。ヘロヘロ笑ってたヒロシの気持ちが分かったんです。私も気がついたらいじめられながらヘロヘロ笑ってたんだよ!動作のノロい女みたいなヒロシなんて皆どうでもよかったんだ!私、ヒロシのためにこれ作ったの、ヒロシのためにこれを皆に送ってやるの、誰にも愛されなかったけど私は愛してるよって皆に言ってやるの!声を上げられなかったヒロシの代わりに叫んでやりたかったの、アタシ、ヒロシのために叫んだんだ!」
玲子「・・・・・」
彩佳「私はヒロシ・・」
AVが落ちる。
彩佳「ヒロシは私・・」
玲子「・・・」
彩佳「私は私。みんなとは違うの」
ポストの底に落ち続けるAV。
彩佳「私は私、文句あるかってヒロシのために叫んでやったの」
睨みつけながらAVを送り続ける彩佳。
彩佳「これやらないと生きていけなかったんだ、さようなら、吐きダコのお姉さん」

本当に好きな人。
いますか?
あなたにいますか?
僕のことが心配?
あの女優のことが心配?
自分と似てるから?
僕もヘロヘロしてます。
AVの中で。
AVの外で。
人間はヘロヘロして生きています。
死にたくないから。
でも死んでしまうから。
本当は皆、どうでもいい。知らん顔していたい。
無かったことにしてしまえるから。
死んだことも、生きていたことも。
でも生きていた、生きている、死んでしまった、死んでしまいそう。
だったら叫びたい。
誰かのために。
自分のために。
誰かが自分で、自分が誰かで。
本当に好きな人。
それは自分、それは誰か。
そのために叫んだんだ、その代わりに叫んだんだ。
私は私、みんなとは違う。
誰だってこう叫びたい。
私は私、皆とは違う。
文句あるか?!
これやらないと生きていけなかったんだ。
それはAV。
それは女優。
それは501。
それは男優。
それは・・・愛。
それは・・・・・あなた。

翌日、会社で笑顔を見せる玲子。
矢島がボヤいている。妻の実家に電話しても切られた。俺はちゃんとやってきたのに、事業に失敗して借金作って、それ返すためにAVやって・・・女房子供にひもじい思いはさせてこなかったのに。贅沢させてやったのに・・。
玲子「ちゃんとやるってそういうことじゃないと思う」
玲子は昨夜、彩佳と花火をしてきたのだ。
玲子「私達なんかより、ずっと必死に生きてんのよ、一生懸命生きてるの」
深夜、ふたりの女は花火をやった。
松明のように、聖火のように、ふたりは花火を振り回し、炎の円を描き、コンクリの道に火花を舞わせ、ふたりで走った。どこまでも走った・・・玲子に微笑が。
そこへ戻ってきたスタッフの一人が、玲子に一台の携帯電話を渡す。彩佳ちゃんから、と。
鈴木「使い方わかりますか?あの人使い方わからないだろうから教えてあげてくれって、彩佳ちゃんが。いつか電話するからって」
玲子は・・・泣いた。
スタッフの喧騒が満ちる真昼のAVメーカー内で。
泣いたことがないと言われてきた女が・・・ひとり泣いた。
携帯を握りしめ・・・涙をこぼし続け・・・すすり泣きが、むせび泣きに・・・それは誰のため?彩佳?ヒロシ?自分?・・・。

ちゃんとしたことなんて何もしてこなかった。
だから切られてばかりいた。
僕なんかより彼女達はずっと必死に生きている。
一生懸命生き抜いている。
だから僕は泣くしかない。
あなたのために泣くしかない。
あなたに笑顔を見せてもらうために。
あなたにも泣いてもらいたいために。
必死に生きる、あなた。
一生懸命な、あなた。
あなたは、そこにいる。

故郷に向かう単線電車に乗っている玲子。
そこへ彩佳から携帯にかかってくる。
彩佳「今、どこにいるんですが?」
玲子「今?小さな電車の中」
彩佳「どこに行くんですか?」
玲子「アタシもポストに投函しようかと思って」
彩佳「・・・お母さんに会いに行くんだ」
玲子「私は怒ってるんだぞって、アンタが皆に言ったように私も言わないと生きていけないでしょ?」
彩佳「私、怒ってた?ビデオの中で」
玲子「私は私、文句あるかって言ってた。わかったよ」
彩佳「ちゃんとわかった?」
玲子「わかったよ、うん」
彩佳、瞳に涙が・・・「よかった」
玲子「もしもし、今どこにいるの?」
彩佳「・・・知らない街」
再び電話する約束を交わして、電話ボックスから出る彩佳。
その顔は・・・頭は・・・完璧なスキンヘッド!
(カツラではない。彩佳役の女優松尾れい子は本当にこのシーンのために頭を綺麗に丸めたのだ)
カーディガンズの「ラブフール」が流れる。
堂々と街を闊歩する彩佳。
胸を張って歩くれい子。
好奇の視線にもまったく動じないAV女優彩佳。
やはり少し挑むような、けれどどこか穏やかさもたたえて、真昼の繁華街を歩き続ける女優松尾れい子。
一方、玲子は電車を降り、古里の駅舎にたたずみ、緑に挟まれた田舎道を一人歩き・・・その先に待っていてくれたのは、母?父?知らない誰か?
再び、花火を見つめ合うふたり。
生きている二人。
ふたりの女。
そして二人は走る。
花火を手に走る。
青い花火に包まれて走る。
無限の夢を描いて走る。
きらめく星々のわななきに包まれるが如く、走る、走る、走っていく・・・・ふたり。

怒ることもない、あなた。
言うことさえない、あなた。
でも、あなたは、あなた。
文句あるか?!誰にあるか?!
女優は怒れる。
だけど、あなたは女優でなくていい。
女優でもいい。
ただ一緒に花火が出来るなら。
色づく炎を、きらめく青い火花を見つめ合うことが出来るのなら。
走れる。
ふたりで走れる。
一緒に走れる。
AVでも走れる。
501は走った・・・。
ふたり。
それでいい。
何が待っていようと、それだけで、いい。

「よかった」




追記@・・・本作は一度もソフト化されず、再放送も滅多にないが、神奈川県横浜市の「放送ライブラリー」(横浜情報文化センター内)で視聴出来ます。



追記A・・・林由美香は、冒頭、玲子が編集しているテープの中で絡みに悶えるAV女優の役。エンドクレジットを見なければほとんどの人は気づかないだろう。
役名は「モニターの中の女」・・・・・。

































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コメント(2件)

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辻丸さん、男性から女を磨け、攻めかたを練習しなさいって、渡されたDVD.女体拷問研究所の作品。紹介される前から知ってるーとは言えなかったよー。
ピピの助
2014/12/01 17:25
ありがとうございました。ご迷惑おかけしました。
KGF JAPANという団体で先月29日にリングアナをさせていただきました。
ツィッターで詳細を見ていただければ幸いです。写真や動画もあります。
よろしくお願いします。
AV落人
2014/12/01 20:10

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私は私!文句あるか?!・・501遺文D AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜/BIGLOBEウェブリブログ
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