AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

アクセスカウンタ

zoom RSS 追想「子宮に捧げる愛の詩」その六"舞台挨拶"

<<   作成日時 : 2013/07/01 11:02   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 1

"初めて裸になったわ。そして、私は怒りを感じている。なぜ私が今まで裸になれなかったか。相手が裸になって向かってこないのに、なぜ私が裸にならなければいけないの?なぜ?なぜ?なぜ?"




「結局お×××を見せるだけじゃないか。舞台で本当にやったのか」
「やってないよ」
「じゃあどうしてあんな気持ちよさそうな顔ができるんだ?」
「・・・・」
「感じてるんだろう、え?」
「・・・・」
「どうなんだ、え?」
映画「恋の狩人 欲望」(72年 日活 山口清一郎監督 田中真理主演)より

映画「子宮に捧げる愛の詩 女体拷問研究所の真実」。
僕の出番はたった一日。そして六日後、無事クランクアップしたと聞いた。
その間僕のしたことといったら、映画を五本見て、AVには一本も出演出来ず・・・。
それからさらにジャスト一ヶ月後・・・映画は完成した。
試写も無いまま出来上がってしまった。
僕は初日、都内の映画館へ向かう。
レイトショーだ。18禁だ。無論、成人映画館ではなかった。

「「壁の中の秘事」(65年、ベルリン映画祭に出品され、国辱映画と騒がれた若松孝二監督の成人映画)をやっている新橋の小さい映画館をのぞいてみますとここは超満員でした。みわたしたところ男性ばかりで、サラリーマンや学生でしょうけれど、ここも安物の人間の匂いがたちこめていました。女の集団とちがって、男の集団がもつ匂いは動物の匂いではなくて階級の匂いです。おそらくかれらの大半は、独身で女と遊ぶ金もなく、ブルー・フィルムやお座敷ストリップをみるだけの金も機会もなく、仕事はおもしろくなく出世のみこみもない、といった陰湿な男性なのでしょう」
作家・倉橋由美子

初日といえば舞台挨拶。
僕は司会役を頼まれてしまった。
出演者の一人として、それなりの挨拶草案を考えていた僕は正直面食らった。
しかも所長、いや主宰者役の衣装である黒マントをはおって出てくれ、という。
この期に及んでさえ、シナリオならぬ、挨拶文のセリフ?まで渡されてしまい・・・。
僕はとうに開き直ってはいた。
土台、わずかの出番しかなかったゲスト的、いや冷やかし調の脇役。
セリフの暗記だけで消耗してしまったような、情けなき助演者。
司会役、つまりは力及ばずの縁の下が相応しいではないか。お似合いではないか。
例によってもらったセリフの、要点と固有名詞だけを抜き取って、そらんじながらの舞台登場。
すでに臆病なるハイ状態。
久々に会う共演者の面々ともろくな会話を交わす余裕もなく、マント姿で初めての銀幕前へ・・・。
その瞬間まで僕の脳裏に駆け巡っていたのは、こんなたわ言だ。
いきなり初日で大丈夫か?
宣伝期間が短すぎやしないか?
本当に、お客さんは・・・・入るのか?

「できた映画(「団地妻 昼下がりの情事」71年 日活 西村昭五郎監督 白川和子主演)は、わたし、映画館へ行って見ましたよ。ずっと必ず・・・。で、ふと気が付いたら、客席で新聞紙の音がカサコソしてて、男の人が一人でやってる。よし、わたしもプロなんだから、この人数をふやしてやろう、と思いましたね」
女優・白川和子

入っていた。
本当に、満員にはほど遠かったものの、確かに客席は埋まっていた。
せめてものチンケなサービス・・・僕は後ろ向きで舞台に立ち、振り返るや大仰に「ようこそ、女体拷問研究所へ!」、とは出来なかった。結局恥ずかしさのあまり、照れに負けてのプロ失格と言うべき体たらく・・・中途半端な出来損ないのパフォーマンスは失笑を買っただけだった。
僕は所詮、司会者。ゲストじゃない。観客のお目当てでもない。
逃げ口上の代わりにキャストと監督を舞台に呼び上げた。
"青春映画"と銘打ったりしてた割りには、いささか平均年齢の高いメンバー。
けれど華やかだった。
美男美女揃い?だった。
少なくとも、異性に不自由はしていない、そう見られても仕方のない憧憬され得る顔ぶれだった。
僕は20代の半ば、成人映画館で"カサコソ"したことがある。
安物の人間?
そういう階級?
動物以下か?
"独身で女と遊ぶ金もなく"・・・事実だった。
"仕事はおもしろくなく出世のみこみもない"・・・それは違った。
当時の僕はエロ本編集者の仕事が面白くて仕方なかった。寝る間も惜しんで休日返上で働いていた。
時給わずか500円!
一生のうちであれだけ勤勉だった時期は二度と戻らない。
出世?考えてもいなかった。
僕の夢は、作家になること。小説家になること。
誰かさんのように・・・。
陰湿に見えただろうか?
客席でカサコソしていた僕も。
舞台脇でマイクを握って突っ立っていた五十男の僕も・・・。

「前のイメージが強いから芸名を変えたら?と言われたんです。でも、自分のしてきたことを消すなんて嫌だから、ずっと白川和子で通してきました。白川和子という名前、当時は主婦の敵だった。女性の敵だったんですけど、それを誇りに思ってたんです」
200本ものピンク映画出演を経て、71年ロマンポルノ第一作「団地妻 昼下がりの情事」で日活デビューした女優白川和子は、73年に結婚引退し、本物の団地妻になるも、「ポルノ女優を団地に入れるな!」と周辺住民?からのバッシングを受けたらしい。
「今は逆に主婦のファンが多くて、不思議ですよね。名前は変えなくてよかったと思ってます」

自分がしゃべったことで憶えているのは、ひとつだけ。
「AV男優の・・・です!」
これだけは言うつもりだった。必ず宣言するつもりだった。
しかし緊張のあまり忘れてしまっていたかもしれない。
僕は呆れるほど早口だったし、しょっちゅう時計に目をやっている落ち着きのない挙動不審の進行役だったから・・・。
当然、ゲストの一人ひとりが何を語ったか、さっぱり憶えていない。
ただもう時間をオーバーしないこと。
会場をシラケさせないこと。
ところが予定より早く終わりそうだったので、あわてて追加のテーマを考えつこうと慌てふためいていたこと・・・そうは見えなかっただろう。いや、あえて壇上から外れ、脇の通路に立っていた僕に注意を払っていた人など、ほとんどいなかっただろう。
それでいい。
それが望み・・・。
いかに己を消していられるか、それが黒子たる僕の仕事だったのだから。

「私がこのグループに入ってから一年になるわ。でも、その間に舞台でファックシーンみたいなこともやったし、こういうこと(お座敷特出しショー)もずい分やったわ。でも、その中で失ったものは大きい。私は勉強しなかった。自分を甘やかした。でも、それもこれも彼らが次から次へ仕事を持ってくるでしょう。そういうどうしようもない現実の中で、頑張ってるっていうことだけが、一生懸命やるっていうことだけが、私を酔わせ、溺れさせて、自分の居る所を居心地の良い場所にしてしまったの。わかる?」
「恋の狩人 欲望」より

しかし、これだけは忘れない。
彼女達は語った。
監督を除き、照れまくっているだけの野郎共を尻目に、二人の女優だけは、熱く激しく語っていた。
その内容を僕は一言も記憶はしていない。
しかしその熱は、必死さは、一生懸命さは、僕の心に刻まれた。
考えみれば当然のことだ。
女優と、AV女優。
それも、初めて脱いで絡んだ女優と、一切脱がなかったAV女優。
彼女達の想いは彼女達にしか分からない。
決心と覚悟で脱いだ女優と、裸も本番も要求されることなく映画出演の責任を果たしたAV女優。
この映画のテーマは、"イくって何?"、"AVって何?"
その答えは彼女達ふたりだけが確信しているのかもしれない。
イく芝居のために裸身を晒した女優。
脱がないという枷にあえて挑戦したAV女優。
彼女達は語りたかっただろう。
もっともっと言葉を尽くしたかっただろう。訴えたかっただろう。
女優だから脱いだ。
AV女優だけど脱がなかった。
それは女にしか分からない、女だけの、男社会へのアジテーションであったはず。
男はやはり今も昔も階級だ。
ケダモノであり、女に動物を強いておきながら、いざとなれば国辱と騒ぐ、どうしようもない連中だ。
彼女達は言った、いやイった。
そして、ただ見せているのではない。
気持ちいい、わけでもない。
感じている、つもりもない。
階級を振りかざすオス共なんかに見せる気はないし、感じるわけがない。
奴らに本当なんて分からないから。
気持ちいい、とはどういうことかなんて理解する気もないのだから。
感じてるんだろ!と断罪してくる輩なんかに、何が分かるというのか?
それはオスだけではない。
高級を自負するメスも。
住民という傲慢なる群れも。
(作家の父は医者・・・女優の父は防○庁の役人・・・とか)

「・・・わかる?裸になって仕事をしながら実は自分の不勉強さを隠す為に、時には自分をごまかす為に裸の中に服を着込んでいたわ。・・・・でも、今はその服も脱いでいる。初めて裸になったわ。そして、私は怒りを感じている。なぜ私が今まで裸になれなかったか。相手が裸になって向かってこないのに、なぜ私が裸にならなければいけないの?なぜ?なぜ?なぜ?・・・・」
「恋の狩人 欲望」より

裸になって向かってこない相手。
あらゆる誤魔化しの上から蔑み、バッシングし、弾圧しようとするだけの相手・・・。
ポルノも猥褻も、今や死語だ。
脱いだくらいで誰も軽蔑しない。
AVなんてバッシングもされない。
本番やってても全然摘発されない。
だが、女たちは語る。
女優は主張する。
彼女達は脱ぐから。
裸になるから。
そしてイってみせるから。
イかせてみせるから。
男を、女を、人間を。
僕は、彼女達を、わからない。
裸になっているか?と問われれば・・・答えられない。
ただ彼女達が語ったことだけは、憶えている。
熱く向かっていこうとしていたことだけは、わかる。わかりたいと想う。
イけるのは女だけだ。
女優だけだ。
あなた、だけなのだ。

僕は作家の前、映画監督になりたかった・・・。

"ポルノ映画なんていうのは大したことはない。それこそ日活のやっていることはミクロの世界でしかなく、そんなことをどう取り上げてみてもどうということはない。セックスはセックスでしかないよ"
72年、デビュー作「ラブ・ハンター 恋の狩人」(田中真理主演)で日活ロマンポルノ裁判(ワイセツ容疑)の被告となった(のち無罪)映画監督・山口清一郎。


告知・・・映画「子宮に捧げる愛の詩 女体拷問研究所の真実」のDVDは、7月12日より発売中(販売・ビデオメーカー)です。

7月8日(月)、新宿ロフトプラスワンにて行われたDVD発売記念イベントにご来場下さった皆様、本当にありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。







ラブ・ハンター 恋の狩人 [DVD]
ジェネオン エンタテインメント
2007-12-21
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ラブ・ハンター 恋の狩人 [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
AV強要についてのtweet等で興味を持った、初めてコメントさせて頂く者です。この件に関しては僕もよくAV視聴してるので他人事じゃないと思ってます。同時に、軽々しい発言もしづらいところですね。自分に、このようなことの加害者になる要素が、全くないどころの騒ぎじゃなく、滅茶苦茶、ありますので。
取り敢えず、制作、ファン、特に女優さん達の、三方とも得することが出来るようになればいいのだと思います。落としどころとしては。そして、労働条件などオーブンにして、それが女優から認められない環境の事務所が、衰退して行けばいいかなと思います。例えばアイドルしてた子がAV転身してる様子など見ても、どうもAVというのはそもそもおかしな状況の場所で、みなそこに臭いものに蓋して、見てみぬふりして通して来ていて、それが普通の状況であるのだと感じます。あまり偉そうなことは言えないですが。
辻丸様の、提示されてる、文章の引用などが、僕的にはドンピシャで、嬉しいです。田中真理さんは小松左京と対談していたのを偶然見知っていまして、こうしてここで偶然発見したのをなんだか面白く感じます。
赤crayora
2017/08/22 01:40

コメントする help

ニックネーム
本 文
追想「子宮に捧げる愛の詩」その六"舞台挨拶" AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる