AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 映画メモ拾遺編・・・「悪人」「黒部の太陽 特別編」「禅 ZEN 」

<<   作成日時 : 2012/06/13 19:13   >>

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"人が欲求のほむらを燃やし、思いを昂ぶらせ、苦しむのは、卑俗なものごとのためである。善きものは人を昂ぶらせたりしない"レフ・トルストイ




「悪人」
2010年 日 監督李相日 原作吉田修一 出演妻夫木聡 深津絵里 柄本明 樹木希林

誰が悪人か?
探しても意味はない。
分かったフリをしても、何も変わらない。
誰もが悪人だ。
生きている限り、人はみな悪人だ。
元も子もないことを書いてしまった。
だが、生きている限り、誰かを犠牲にしている。
生きていく限り、誰かを押しのけて自分を優先させる。
ひとりで生きている人間なんていないから。
独りで生きられるほど、人間は強くも立派でも、美しくもないから。
みんな、誤魔化している。
そうするしか生きていけない以上、人は誰かを悪人にして、自分を、自分だけを何とかして正当化させる。
だから、愛せよという。
大切な人を見つけろ、そんな人が誰もいないなんて、駄目だという、間違ってるという。
そうだろうか?
大切な人のために、人は暴力を振るう。
愛する人のために誰かを殺そうとさえする。
この映画では全ての登場人物たちが、愛した人に裏切られる。
大切にしたいと思った人が自分の知らない所で、殺し、殺され、捨てられ、笑われる。
そこで裏切られた者は、どうするか?
車から蹴り飛ばす、訴えてやると罵る、首を絞める、凶器をふりかざす、ハイエナの如く群がるマスコミに頭を下げる、悪人と囁く・・・。
全ては自分が生きるため。
自分は悪くないと、己に相手に世間に叫ぶため。
人は結局誰かに何かに、憤怒をぶつけ、負けまいと、勝者になろうと、強く生きていこうと・・・誰かを生贄にし、そしてこう断罪する。
あいつが悪いんだ。
悪人は、あいつの方だ。
だが、たった一人、己が間違いなく悪人であることを自覚した人間がこの映画にいる。
それは殺人者。
法的に絶対の悪人。
彼は憎悪にかられて愛した女の首を絞めて殺した。
しかしラスト、大切にしたいがために、愛してくれた女の首を絞めた。
悪人だから彼は悪人として彼女を救った。
無論、そこには被害者を顧みる影は少しもない。
だから悪人。
やっぱり悪人。
彼だけが悪人・・・。
この映画はステレオタイプな人物ばかりだし、シナリオに無駄やいい加減さが多く、作品としてはまったく不完全で歯がゆい。
ただ、皮肉にもその不完全さゆえに、僕はこのドラマの人物全員を否定しながら、まさに"悪人"の如きこの失敗作から突きつけられたやりきれない真実を唾棄しきれないでいる。
人間はみな悪人だ。
そして最も許せない悪人は、己の悪を決して認めようとしない、自分をあくまでも悪人ではないと信じきっている、あらゆる立場の個人たちだ。
誰かを本当にその手で生贄にしなければ己の悪に気づかない人間。
生贄にしていることさえ分かっていない、エゴと自由を、我欲と正義を、快楽と大義名分を、すり替え、混濁させて驕慢に生きている卑小な生の独裁者たち。
悪人だと知るしかない。
己は悪人だと勇気を持って、優しさを持って、愛に照らして、噛み締めることによってしか、人は人を、弱い人を、傷ついている人を、踏みにじられ棄てられようとしている人を、本当に救うことは出来ない。
それがたとえ手遅れだろうと。
偽善と蔑まれようと。
無力と笑われようと。
我々は悪人だから。
何もかもそこから始めなければ、果てしない繰り返しにしかならないのだから。



「黒部の太陽 特別編」
68年 日 監督熊井啓 出演三船敏郎 石原裕次郎 樫山文枝 辰巳柳太郎

人間はカネと時間と、大勢の人力、そして絶対の権力でもって数々の大事業を成し遂げてきた。
これからだって、縄張り争いだの祭典だの改造だのと・・・。
しかしその隅で、たった一人のちっぽけな貴い命をいつまでたっても救うことが出来ていない。
カネにならないから。
時間がもったいないから。
支配者たちにとっては、しょせん他人事だから。
本当に大切なこととは何か?
人を心から大事に思い、願い、祈るとはどういうことか?
歴史には記されない。
無数の無名の命を顧みなかった悪人の真の姿を、誰も憶えていようとはしない。

(この映画の中で主人公の次女が、トンネル貫通を待たずして白血病で亡くなるが、これはドラマではなく事実である。また監督と共に脚本を執筆したシナリオ作家井手雅人氏は64年、やはり白血病で、まだ13歳の愛娘を亡くされている。翌月、東京オリンピック開催、そしてベトナム戦争勃発・・・・)


「禅 ZEN 」
2009年 日 監督脚本高橋伴明 出演中村勘太郎 内田有紀 ティ龍進 藤原竜也 

あなたの中にもホトケがいる。
私の中にもそれがいる。
だのに、救われたい、あれも欲しい、これもしたい・・・ホトケは悪に変わり、悪をホトケと信じ、人は醜く生き、誰かを苦しめ、誰かを殺す。そして生きる。
生きるために殺す?
生きるために・・・誰が?
誰にその権利がある?
資格がある?
どうして許される?
決めるのは常に殺す側。
だから彼らは自分達を悪人とは呼ばせない。
悪人はお前だ。
従わない奴は悪人だ。
こうして誰もが悪人になる。
悪人であることをとっくに忘れて、今日も誰かを悪人にして、毎日を人間の真似をして生きていく。
誰にも辿りつけない清浄で高潔な生き方。
それは作り事の上にしかないのか?
映画だけの虚しく、わずかな、はかない一瞬でしか、残されていないのか?


僕は悪人です。
そう信じることだけが、僕が生きている、よすが、なのです。
あなたを救えれば・・・・。





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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
始めまして辻丸さん。
貴方の言葉が私を罪人にします。
其なりの仕事、其なりの給料、其なりの住まい、其なりの人間関係…。
自分は幸せなのか、幸せなふりをしているのか、不幸せを楽しんでいるのか。
まだ、23歳の私には分かりません。
でも辻丸さんの言葉は深く、冷たく、私の背中を押してくれています。有り難うございます。
田中藍
2012/06/25 21:33
ごめんなさい。
僕の言葉が貴方を責めてしまいました。
けれど貴方は罪人ではありません。己が何者か?と問い悩み苦しむ貴方はすでに其れなりの人ではありません。
貴方なり・・・貴方の幸せ・・・祈ります。ありがとう。
AV落人
2012/06/26 12:43

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