AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 導きに死なず・・・「燃えよ!カンフー」詩録

<<   作成日時 : 2009/07/11 20:46   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 4 / トラックバック 0 / コメント 0

「・・・もう何も教えません。あなたが持っているものは解毒剤ではなく、他の毒でしょう?」「何を言うんだ、私がこれだけ言ってるのに信じないのか?!」「信じさせたければ、あなたが自分でその薬を飲んでみせて下さい」



少林寺時代、まだ少年だった僧は、時の皇帝に、日本の能を見せようとした老師のお供として宮殿を訪ねる。
だが、死期迫った老いたる皇帝は、舞台上で幽玄に展開される能を、やがていらだたしげに中止させてしまう。
皇帝「あなたの話では、日本の能には哲学が秘められておるそうだが、舞台を見、歌を聴いたが、求めるものは得られなかった・・・」
老師「・・・そうですか・・・残念です」
すでに足腰立たず寝たきりの皇帝は、老師に能の説明を求めようと、側近たちに別の涼しい場所へ移動させていく。
一方、退屈そうに舞台を眺めていた若き殿下は、僧を自室に導き、驕慢そうな態度で茶を出して言う。
「体が弱っている父がどうしてあんな退屈なものを見る気になったか、教えようか?」
僧「・・・はい」
「死とはどういうものか、究めておきたいんだ・・・死ぬ前にな」
僧「・・・・」
殿下は、茶を勧め、僧は一口飲んでから尋ねる。
僧「死ぬ前に、死の世界が分かるんですか?」
「そうだ。能を見れば、な」
僧「能?」
「お前にはどんな意味か、分かったんだろ?」
僧「ええ、とても素敵でした、綺麗で。私が能を気に入ったことが、おかしいんですか?」
「そうは言ってないさ。お前のような卑しい生まれの人間が、ろくな学問もないのに、貴族の芸術が分かるなんて言ってるのは、生意気だって言いたいな」
僧「そうでしょうか・・・役者は、みんなのために演技をするんでしょ?」
「どうかな」
僧「あなたは、死の意味が分かると言いましたね?」
「ああ。あれは死の世界を旅する勇者の話だ」

死を究める。
しかしそれは哲学とは限らない。
能が退屈な芸術か、綺麗に魅せられる"みんな"のためのものか。
分かったつもりの貴族。卑しく感動する民。
生意気と、勇者。
得られる者、得られない者。
権力は飽くなき欲望に偏執する。
遂には生をも見限り、死という未踏を制覇しようと卑しく足掻く。
だから権力には哲学がない、学問がない、芸術もない。
追い立てられる肥大したエゴと傲慢が、剥き出しで存在するだけ。
醜悪の塊が、虚飾の衣装で人騒がせに転がり続けるだけ。
生を支配出来たと自涜している輩を、死が笑っている。
全ての"みんな"の真なる象徴として、死の世界は常に何人に対しても、素敵なほどに幕を開けている。

池の木陰で、横になった皇帝と老師が語り合う。
皇帝「色々悪いことをしたあげくに、やっと分かったが・・・力には三種類あるようだ」
老師「・・・」
皇帝「富と、武器と、知識だ・・・しかし知識の力が一番強い」
老師「どう使います?その力を」
皇帝「もしわしが、相応しい仏を選び、相応しい経をあげて、正しく祈れば、過ちは消えるはずだ。教えてもらえたら、広壮な寺を建てて、あなたに寄進するつもりだ。導いてくれないか?」
老師「それは無理です」
皇帝「!・・・・寺など欲しくはないか?」
老師「その願いは、教わって叶うものではありません。自ら悟らなければ」
皇帝「力と富を求めて・・・いつとなく・・・信念を忘れてた・・・と言うより、邪悪な神を信じていた」

三つの力・・・富、武器、そして知識。
カネで大抵のものは買える。
誇りも感動も、平和も愛も、人の心も・・・。
武器がそれを支える。
民族の誇り、勝利の感動、虐殺による平和、侵略という愛・・・。
武器は人の心を変える。酔わせる。餓鬼のように、いきがってみせる。
結果は英雄、カリスマ、あげくは追っかけ?獄中結婚?にほん人はリッパだった?戦争してたから・・・。
カネも武器も使うのは人間。
その人間というケダモノを動かすのが、知識なる虚栄。
民族も歴史も、伝統も美学も、知識とやらが産んだ大義名分。
隠蔽と詭弁が充満する、強権のマニュアル。
相応しい富なんてない。
相応しい武器なんてない。
人間に正しい知識なんて、結局誰からも、どんな圧力からも与えられるものではない。
教わろうとした瞬間、導いてもらおうとかしずいた途端、富が武器が知識が、振り上げられる。
過ちは自虐として排斥され、自ら悟ることも、考えることさえも、無用の選択として抹消される。
もはや邪悪の"神"を信じるしかないのだ。
神なるものを意識した刹那、人は下僕となって、命を売り捨てるほかなくなるのだ。
歴史が証明している。
だから奴らは、歴史を捕縛し、あらゆる占領を飾り立てる。
昔のニッポン人は・・・だから我々を見習え、と・・・・。

「私の父は、死の国で何が待ち受けているか知りたがっている。死んでからも大勢の一人ではなしに、少数でいたいんだ」
僧「・・・少数?大勢?」
「この世では、大勢が少数の犠牲になってるだろう?お前達は大勢の一人だし、私は選ばれた少数だ」
僧「生まれる前に決まってるんですか?」
「父はそう信じてる。お前を見てて、父のことを考えたんだ」
僧「なぜです?」
「さっきの舞台を見てると、お前が何を考えているか、はっきりと分かった」
突然、苦しみだす僧!
「・・・筋の運びにつれて表情が変わるんだ。同情、怒り、共感・・・心の動きが手にとるように分かった。だが、父の顔に見えたのは、近づいてくる死の恐怖だ・・・それだけだ」
激しい胃の痛みに悶絶した僧は茶碗をひっくり返してしまう。衣服を汚された殿下は激怒しながら、衝立の向こうで側近に着替えさせる。
眩暈を起こしながらも茶碗を凝視する僧。そのこぼれた茶の跡・・・。
歪んだ微笑を浮かべながら戻ってきた殿下に鋭い視線を向ける。
「身分が違うのになぜお茶に呼んだか、お前は不思議に思わないのか?」
僧「お話があったためでしょう?」
「・・・毒を飲ますためだ」
僧「・・・!」

少数の犠牲になる大勢。
彼等は人に同情し、時には怒り、また共感する。
だが少数は何も考えない、何も感じない。
あるのは恐怖、己に近づいてくる死の恐怖だけだ。
心の動きが誰にも分からないくらい堂々と君臨しているのではない。動く心なんて元々ないんだ。命という名の己が権力が絶える恐怖への脅えだけなのだ。
少数には他に背負うものがないから、必死にその地位にしがみ付く。あくまで血縁で囲い込み、大勢に紛れることを徹底して拒絶する。
"余人をもって代えがたい"
"何とかファミリー"
"○○会"
世襲、ガンバレー!大丈夫、ダイジョーブ!親のDNAが悪い!ぶっ殺す!自分が目立つことだけ考えてりゃいいんだよ!このサイテーヤロー!
毒だ。
害毒ほど、生きることにかけては化け物なのだ。
そのためなら"諸悪の根源"気取りで泣いてみせる、テレビに出て稼ぎまくる、大雨の中マラソン大会で烏合の衆を躍らせる。
筋書きどおりだ。
一滴の猛毒が、大勢の中から巧みにひとつひとつ毒殺していくための、麻薬の儀式だ。
死の恐怖への権力の痛み止め。
我々は果てしなく吸われ、打たれ続ける。

苦しみに耐える僧をあざ笑いながら、殿下は解毒剤の入った小瓶をちらつかせる。
「言うとおりにすれば、お前にやるぞ。さもなきゃ・・・死ぬんだ」
僧「お願いです。医者を呼んで下さい。死なないうちに」
「死のうが生きようが関係はない。お前は財産も学問もろくにないし、死んでも泣く者もいない、貧乏な寺の小坊主だ」
激痛のあまり床を這う僧を見下ろしながら罵る殿下。
「本当に馬鹿な奴だ。まずいものを食ってお経ばかりあげて、生まれてきた価値があると思うのか?」
僧「私に・・・何をしろとおっしゃるんですか?」
「死ぬってどんな気分か言うんだ?父に教えてやりたい」
僧「・・・私がこのまま死ねば・・・罰を受けますよ」
「ふん、罰なんて受けるものか!私が言うことは何でも通るんだ」
僧「・・・後で訊かれますよ」
「訊かれても平気さ。私は殿下、お前は小坊主だ。身分が違うよ」
僧「・・・人はみな、同じです」
「父はそう言ってない」
僧「・・・もし助かったら・・・」
「駄目だよ。解毒剤を飲まなきゃね。・・・・どんな気分だか言ってみろよ?」
僧「・・・」
「言えよ!言うんだ!言え!!言ええ!!」

身分・・・ニホンは身分社会だ。
上流ほど、こう答える。
父が言った、母が言った、センセイが言った、偉い人が言った・・・。
自分では決して何も言わない。
その分、下流に言わせる。
どんな気分か言ってみろ!どれだけ情けないか言ってみろ!どこまで弱いか・・・言えよ、言うんだ、言え!
答えることで下流は悟らされる。
財産も学問もろくにないし、まずいものを食って、メールばかり打って、ローンばかり組んで、年金だけをアテにして、そんな全てにまんまと裏切られて、オクニに見事に騙されて、生まれてきた価値があると思うのか?!
だから・・・死ね・・・。
さもなきゃ殺せ・・・誰でもよかった・・・下流同士なら誰でも何人でもいい。身分は、いつまでも変わらないよ。
罰を受けるのも、死のうが生きようが関係ない大衆だけ。
互いに裁き合って、死刑し合って、冤罪し合って、憎み合って、殺しあって・・・それがオクニの教科書。
死んでも泣く者もいない・・・それは僕だ。
上からも下からも弾かれた、何も言えない、何も通らない、この僕だ。
けれど僕は殺さない、踊らない、もちろん答えない、悟らない。
すでにいないも同然だから。
死ぬってどんな気分か?
それは今の僕そのものだから。

現在・・・急な崖を這い登ろうとしていた僧は、突然の崖崩れに巻き込まれ、気がつくと地底らしき異界に迷い込んでいた。
そこには鬼神の如き邪教の教祖が立ちはだかり、我等が神を信じれば、不滅の生命と万能の力を得られると鼓舞する。
そして、神を崇め、お前の命をその神の賜りものと認めれば、ここで永久に救われると、僧に勧める。
僧「命が、賜りもの?・・・御仏のほかは信じるなと教えられています」
教祖「神の救いを拒んで、闇の中で一人で死んでいくつもりか?その地底の隙間は間もなく閉ざされてしまう」
僧「私は御仏しか信じません。死んでもやむをえない」

万能の神、不滅の生命。
やれば出来る、夢は叶う、神の子、ワタシが証明なの!
そのためにカネを集める、肉体を偽装する、徒党を組む、私刑にかける、厚化粧してテレビに出る・・・。
僕にはカミもホトケもない。
だからこの命、誰に賜るものでもない。
犬死に結構。
闇の中でたった一人・・・ひとり・・・独り・・・それもやむなし。
僕の未来は閉ざされている。
でもどんなに深い地底であろうと、僕の心までは巻き込めない、崩しきれない。
僕は無能であり、もう滅びを自覚しているから。
この先にどんな鬼が立ちはだかろうと、救いに唾棄した者に、権力は届かないから・・・。

朦朧とした死への渦中にある僧を、殿下は問い詰める。
「死の国へ行って何を見たか、言うんだ。そうすれば解毒剤をやるぞ。何を見たか全部私に話せば、今すぐお前をその苦しみから解き放してやる」
僧「・・・」
「眠っている間にも、心の中の何かを見ているように、お前の目は、しきりに動いていたぞ。何を見てきた?」
僧「・・男がいて・・神様の名前を私に言って・・・その神様を心から信じて崇めれば・・・救われると言いました・・・」
「何という神だ?言ってみろ!」
僧「・・・その壜の中に、解毒剤が入ってるっていうのは、本当ですか?」
「嘘は言わないさ、こいつは解毒剤だ!さあ言うんだ!!」
僧「・・・」
「その神の名を言うんだ?何と言って祈ればいい?そいつを教えれば命を助けてやる」
僧「・・・ほんとに助けられますか?」
「何回言ったら分かる?解毒剤があるんだ。お前を助けられるのは、私しかいない。さあ言ってみろ!」
僧「・・・もう、何も教えません。あなたが持ってるものは解毒剤ではなく、他の毒でしょう?」
「何を言うんだ!私がこれだけ言ってるのに、信じないのか!」
僧「信じさせたければ、あなたが自分でその薬を飲んでみせて下さい」
「!・・・勝手にしろ!もう訊きたくない!死ね!!死ね!!」
僧「・・・」
「死ぬんだ!!死ぬんだ!!死ねぇぇ!!!」

権力は誘う。
解放してやる、救ってやる、助けてやる・・・私しかいない、信じろ、祈れ、崇めろ!
殺してやる、とは言わない。
死ね、死ね・・・ただ、勝手に死ね・・・つまり責任なんてない、ヒショが勝手にやったこと、説明はもう済ませた・・・。
殿堂を建ててやる、だから現場は死ね。
市場を作ってやる、だから消費者は死ね。
五輪を招致してやる、だから病院をタライ廻しされて死ね。
弱い者は死ね。
いじめられっ子は死ね。
地デジ買えない奴は、再来年には死ね。
信じるな。
薬なんて信じるな。
やってみせたこともない連中を信じるな。
権力は、これしかない、と必ず言う。
これ、はあなたで十分だ。
あなた一人が、アナログな真実なんだ。

皇帝「富も力も、期待しておったものは、もたらしはしなかった・・・」
老師「何が欲しかったのです?」
皇帝「幸福だ・・・」
老師「・・・それで?ご子息には何をお望みですか?」
皇帝「始めは、わしとまったく同じ生き方をさせるのが、あいつのためだと思った。だが今では、大きな誤りであったことに気づいている・・・」

幸福・・・空疎な言葉だ。
一瞬の幸福なら誰にでもある、多分。
だが永遠の不幸が、何もかもを奪ってしまう、絶対。
人は期待したとおりになんて生きられない。
誰かと同じ生き方なんて、到底出来ない。
それなのに親は、社会は、政治は、他人は・・・期待どおりに生きろ、と喚く。
まったく同じに生きてみせろと、雁字搦めに強制してくる。
誤ったままの方が都合がいいから。
また何度でも、どんな巨大な過ちでも、繰り返して、巻き起こして、ガッポリ稼ぎ、思い切り威張りちらすことが出来るから。
まさに地上の幸福。
権力の最上。
戦争は何一つ終わってなどいない。
いつでも殺しに行かされる。
今でもどこかを虐殺している。

宝石や豪奢な衣服を示しても神の名を答えない僧に殿下は呆れ、自分の茶を口にする。
「お茶も冷めた・・・苦い・・・(腹は)痛むか?」
僧「・・・お茶の話をして下さい。そうすれば訊かれたことにもお答えします」
「お茶だ?!毒を飲んで狂っちまったんじゃないのか?すぐ死ぬんだ、お茶の話などしている暇はない」
僧「お茶の話をすれば私もあなたに・・・」
「死の国へ行く旅の話をしろ!」
僧「その前にお茶の話を・・・」
「・・・よおし、分かったよ・・・話そう・・・お茶は薬としてインドから伝わってきたもので、茶碗についで、出すにも飲むにもそれぞれ作法が決まってるんだ」
僧「ええ、昔から不老長寿の薬だと言われてきたと聞いています。お湯の温度は、熱くてもぬるくても、お茶がおいしくないとか」
「それだけ分かってるんなら、もう話すことはないだろう?お茶は値段も高いし、貴族だけの飲み物だ」
僧「でも、私達だって飲みます」
「それは知ってるさ。毒入りの茶は、お前達が飲むんだ。そして私の言うとおりにしなきゃ、苦しみながら死んでいくんだ!」
僧「それじゃあ死も、皇帝陛下や貴族だけのものですか?」
「分かりきったことを言うな!訊いてることに答えろ!」
僧「最初にお茶を飲み始めたのは、貧乏な人たちだそうです。お湯を沸かして、一つまみの葉を入れて、それをせめてものもてなしとしてお客に出したとか」
「やめろ!!お茶の話はもうたくさんだ!!」
僧「あとひとつ、聞いてくれませんか・・・」
僧は言った。さっき殿下が憤慨しながら着替えている間に、茶碗を取り替えたのだ、と。
自分が飲まされたのと同じ毒入りの茶を、今あなたは飲んでしまったのだ、と。
僧「あなたが作らせた毒です。死ぬまで頭がはっきりしているそうですから、死の国の様子を自分で見ることが出来ます」
驚愕し、ワナワナ震えだした殿下は膳を引っくり返して喚き散らす!
「お前は何と言う奴だ!悩んでいる父を見ていられずに、答えを求めようとした殿下に毒を飲ませたのか?!」
僧「そのために私を殺そうとしました」
「・・・大勢の一人だ、生きてても意味はない、私とは違うんだ!国の将来が私に懸かっている!」
半狂乱になって、のたうち回る殿下。
解毒剤があるでしょう?と問う僧に、苦々しく偽物の壜を投げつける。
「お前を呪うぞ!お前みたいな奴は地獄に堕ちて永劫の火に焼かれりゃいいんだ、もし私が死んだら、七代までも生まれ変わってお前に祟ってやるぞ!死んだ後までよく覚えておけ!!」
側近たちに抱きかかえられていく殿下。
僧はゆっくりとくず折れる・・・。

法律は知識と同じだ。
単語と決まりだらけ・・・何も分かってなどいない。
それに盲従する我々は、毎日毒を飲んでいる。
生きるために毒をあおって、苦しみ続ける。
やがて耐えられなくなると絶命する。全ての死が、こうして管理され、法制化されていく。
分かりきったコッカ社会。
いつまでたっても変わらない、不毛の鉄則。
残るは相打ちしかない。
自爆しかない。
心中しか、抵抗はない。
権力は狂乱するだろう。
あらゆる手段、罵詈雑言をもって、弾圧してくるだろう。
呪い、祟り、怨念・・・捨て台詞・・・。
大勢の一人は、死んでいい。
権力の自分は、断固として死んではならない。
許されない。
ありえない。
あっては、ならない。
我々はこんな法に生きている。
何とかまだ、死なないでいる。
どこに人間がいる?
あなたは、いる?

現在・・・あくまで邪教を拒む僧は、落盤や幻の剣士たちからの受難を被るが、決して屈しない。
教祖「意地を張るのは無駄なことだ。嫌でも祈らせるぞ」
僧「それは無理でしょう・・・これは夢の中です」
力尽き、意識を失いかけた僧の前に半裸の女が妖しく姿を現す。
横たわる僧を介護しながら、この世界の神の名を口にすれば、みんなが救われる、と説く。
僧「・・・外に出る方法は?」
女「外なんてありません」
僧「・・・どうしてです?」
女「神の御意志です。洞窟に住む全能の火の神です・・・・"命を支え、目的を与える神に栄えあれ"」
僧「・・・・」
女「昔、私達は湖の側の、光り輝く町に住んで、鳥を食べて暮らしていました。その頃は生贄も奉げず、羽の生えた蛇を神として崇めていました。それがある日、急に湖が濁って、鳥が来なくなり、飢え死にする者もでました。神に見放されたのです。それから間もなく、深い洞窟で見つかった神が・・・この火の神です。それ以来、私達はずっと洞窟の奥で暮らしています。神に生贄を奉げて・・・」
僧「・・・なぜ、生贄が必要なんです?」
女「神の御意志です。もし生贄を奉げなければ、私達はみな、神の怒りに触れて、死んでしまいます」
僧「でも私は違うでしょう?外から来たんですから」
女「外なんてありません。あなたはピッタリです。自分の神を棄てた者でないと、生贄にはなれないのです。ここの人は神を信じて裏切ろうとはしないので、資格はありません」
僧「・・・・」
女「お望みなら、私は、あなたのものです」
僧「・・・・」
女妖の誘惑に一度は犯されかかった僧だったが、決然と拒絶する。
生贄になれば名誉ある神となり、厳かなる儀式を経て、永遠の命が与えられると誘う女に、僧は答える。
僧「私は人間として、生きたいんです」
強固な意志の力を支えに、僧は死の岩と大地を突きのけて、日の光が注ぐ地上へと辿り着く。
迎え入れるように天へ向かって羽ばたく三羽の鳥達・・・。

44年経った。
また生贄が狩り出されようとしている。
名誉ある戦死。
厳かなる出兵。
永遠の平和。
愛するものを守るために。
生きるために戦え。
つまり、また殺せ・・・。
外なんてない、と思わせる。
本当は夢の中なのに。
目的を与えてくれた、と信じ込ませる。
本当は私欲のためでしかないのに。
みんなのため、と説く。
鳥を食べてたくせに。
蛇の真似をしていたくせに。
こうして裏切り者と呼ばれる者だけが残る。
最前線の生贄にされる。
現在だってすでに・・・過労死、病死、自殺、極刑・・・。
誰も死ななくなったら、それを拒みだしたりしたら、少数の側が死んでしまうから、それは困る、嫌でも困る。
人間として、生きたがってはならない。
それが歴史だ。
"バレない嘘ならついていい"歴史だ。
都合の悪いことは隠蔽すべし、のベストセラーだ。
地上へもう出られなくても僕は構わない。
ただ飛翔する鳥たちを、見上げて逝きたい。

毒を調合した医者の治療によって助けられた殿下は、老師の教えで悔い改めた父に諭され、昏睡している僧を見舞う。
「聞いてくれ。選ばれた者のために、大勢の一人が命を棄てるのは当然だ。私は、そう教わってきた。だから父のために、死の国の有り様を突き止めようとしたんだ。でも・・・父は先生の話を聞いて、誤ってたと、悟ったそうだ」
老師「・・・」
「私をひどい奴だと、さぞ恨んでるだろう?しかし何年か先には、許してくれる日が来ることを・・・祈ってる」
やがて回復した僧は、茶碗を入れ替えたと言っただけで、実際は何もしていないことを皆に語った・・・。
宮殿を去る時。
老師に最後の頼みを伝えようとする皇帝。
皇帝「わしが今、一番心残りに思っておることは・・・この世にはまだ、学ぶべきことがあるのに、それをなおざりにしていた愚かさだ・・・」
息子を少林寺に入門させ、厳しく鍛えてくれないか、と皇帝は乞う。
老師「あの年では、修行には遅すぎます。それに素質がなければ耐えられません。そのために弟子入りする前には、試験があります。精神と肉体の」
皇帝「それでもし、試験に落ちたら、素質がないと決まったら・・・どうなる?」
老師「寺には、おけません」
皇帝「よし、それでも構わん。もし試験に落ちたら、追い出してもらおう、頼みますぞ、先生・・・先生・・・」
息絶える皇帝。
泣き崩れる息子。
老師が僧に言う。
老師「ひどい想いをしたが、危うく死にそうになった経験は、無駄にはならん。いつの日にか、きっと役にたつ」
僧「・・・・」

僕の心残りは・・・やはり、なおざりにしてきた愚かさだ。
貴族でもないのに、権力もないのに、才能も愛もないのに。
しかし、この世にはまだ学ぶべきものがあるのだろうか。
人間を知らない。
正義を知らない。
信頼を知らない。
恋人を知らない。
修行するには遅すぎる。
素質もない。耐えられない。追い出される・・・誰からも。
ひどい想いばかりして生きてきた。
それが無駄であったかなかったか、死ぬ時に分かる。
どんな風にくたばるかで、答えが出る。
僕は口先だけの反逆者だ。
クリックするだけの、革命廃人だ。
いつの日にか、許してもらえるだろうか?
誰かに。
あなた、に。
命、に・・・・・。わからない。




追記・・・・このエピソードは、デビッド・キャラダインの初監督作品である。

















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