AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 24歳の犯罪。

<<   作成日時 : 2006/07/08 18:58   >>

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24歳の男が殺人を犯した。彼は働いていなかった。
24歳の僕は、エロ業界に入っていた。僕にはたまたま、殺したい相手がいなかった。

僕は23歳から働き始めた。背広を着、地下鉄を乗り継ぎ、いくつかの職場をほとんど一か月単位で辞めていた。
「文章に関わるような仕事には就かない方がいいよ」
ある先輩からそう言われた。半年後、僕はエロ本でかなりの量の原稿を書いていた。
あれから二十二年。
僕は文章で食えてはいない。
一円の原稿料も貰っていない。
ただ、この業界にはずっといる。なぜか仕事は途絶えた試しがない。
「立たなくなったら、男優もおしまいでしょう?」
そう言われてから、二年は経つ。
僕は、おしまい、と言われ続けて生きてきたようなものだろう。
人の人生なんて、誰にもわかりはしない。
当たり前の真理に、僕は呆れ返るのみだ。

男は二度留年し、来年も卒業出来そうになかったらしい。
三男坊で、パチンコに明け暮れていた、とか。
24歳になって働いていなかったことから、男は人を殺した。これでもう、学校にもパチンコ屋にも、自分の部屋にも行けなくなった。
僕は23歳で、アダルト業界に入った。あまり他人に言えない職場で、日給五千円だった。
僕は当時からパチンコにはまったく興味がなかった。
わけも分らずSMというものに魅かれ、それで働けるようになっていた。

僕はSMに関する仕事に就きたかった。幾ら儲かる?将来どうなる?、そんなこと頭の片隅にもありはしなかった。
僕は一年近く、SM雑誌の編集者募集の広告を待ち続けた。貯えはどんどん無くなり、今週どこかで働きださないと、もう食っていけない、というところまで追い詰められた。その週も広告は載っていなかった。僕は諦め、ファーストフード店の夜間清掃員のバイトを決め、面接に出掛けてみた。
そこは何回か入ったことのある、駅前の大きな店だった。
五分、十分・・・僕は店の前でウロチョロした。何度も何度も行ったり来たりしながら、僕はブツブツと繰り返していた。
ここでいいのか、ここで働けるのか・・・。
僕はラーメン屋でバイトしたこともあった。新幹線の車内清掃を一番長くやっていた。
でも、僕はその店には入れなかった。どうしてか、足も気も、体も心も進まなかった。
あと一週・・・もう一週だけ待ってみよう・・・。
僕は雑踏の中に紛れて、そう呟いていた。
そして翌週、果たして僕は、目当ての出版社の募集広告を見つけていた。
僕はその一週間のお陰で、この業界に入れた。二十年経ってもまだ食べさせてもらっている、妙な腐れ縁になってしまった。
男には一週間ではなく、ハンマーが用意されていたわけだ。
二十年後、彼はどこで何をしているのだろうか。
一週間前、彼はパチンコしかしていなかったのだろうか。

たまたま自分と名前が似ている、というだけの理由で僕は24歳の自分を思い出していた。23歳でエロ本の編集者になった僕は、一年もしないうちに夜逃げ同然で辞めてしまい、24歳でまた、別のアダルト系出版社にもぐり込んでいた。
すべては偶然だ。
何もかもが、僕の悪運だ。
しかし24歳で殺人犯になってしまった彼が、今の僕と同じ45歳になった時、多分もう僕はこの世に存在しないだろう。
彼は幸せになっているかもしれない。
僕の名前を覚えている人が、ひょっとしてまだ残っていてくれるかもしれない。
犯罪も偶然だ。
彼も僕も、自分なりの悪運に付き合ってきてしまっただけだ。
ただ、オトシマエはつけなければならない。
人生に華々しい卒業なんてないが、永遠に怠惰な留年なんて、やはりあるはずもない。



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