AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 選択という忍耐・・「燃えよ!カンフー」詩録

<<   作成日時 : 2006/07/11 18:32   >>

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「人はそれぞれ友達を、そして敵を選ぶ権利がある。あるいは愚かしい選択をするかもしれん。しかしそれを決めるのは、その人間自身だ。それによってどういう結果を招こうとも、選んだ人間自身が耐えねばならぬことだ」

僧はジョニーという青年を助けたことから、鉄道爆破を企てる農民グループの一味とみなされ、彼等と共に追われるハメになる。
そのグループは、横暴な鉄道会社によってタダ同然で土地も家も奪われたことから、執拗に線路を破壊して工事の邪魔を繰り返していたのだ。
鉄道会社の雇った兇暴なガードマン達によって、仲間をすでに何人も殺されていた彼等は、決して殺人は犯さなかったが、抵抗をやめるつもりは断固としてなかった。
ガードマンに撃たれて重傷のジョニーを介抱しながら、僧は彼等のリーダーである初老の男ヤングブラッドに問う。
僧「争いを続けるんですか?永久に・・」
「・・最後までやり抜くって、皆で誓ったんだ」
僧「・・・」
「それに・・ここまできて今さら後へはひけん」
僧「しかしそれだけ犠牲も・・」
「その通りだ・・言われんでも分ってる・・。考えてもどうにもならんことは、もう考えないことにしてる。仕方がないんだ」
僧「でも・・そうしている間にも鉄道はどんどん出来るのでは」
「出来る限りの妨害をしてやる」
僧「より大きな犠牲を払うのは、どちらですか?」
「・・・・」
僧「命は、かけがいのないものです・・」

最後までやり抜け、途中で諦めるな・・・人間は愚かなことにほど、派手でヒロイックな夢を見やすい。
だがそんなものは考えることに怠けたがる、乱暴者の詭弁にすぎない。
やり抜く、とは何だ?
出来る限り、とはどんなだ?
誓い、というナルシスに溺れた、安易な放言ではないのか。
後へひく勇気もない。
やり抜くという惰性、出来る限りという妥協・・・。
僕にも何の誓いもない。
考えてもどうにもならないことは、とっくに何も考えないようになってしまった。
だけどこれだけは、知っている。
やり抜くことだけが人生ではない。出来る限りが、絶対の価値ではない。
最後なんて、ないんだ。
考えてもどうにもならないこと、すべてはそうであり、またそうでないとも言えるのだ。
やり抜かなくても生きていける。諦めて、後へでもどこへでもひいたって、人生に終わりは来ない。
自分から終わらせない限り。
命こそが自分自身への最も大切な誓いである、と信じる限り。

僧は少林寺時代を回想する。
ハンという同期生との模擬試合。老師が言う。
「二人の人間が戦う時、勝つのはどちらか、すなわち技の優れた者が勝つ。では、二人共々持てる限りの力と技を尽くすのだ」
僧は攻撃を、ハンは防御に別れて戦い、僧が一瞬の隙をついて勝利すると、すぐに昏倒しかかったハンを介抱する。
見届けていた老師が言う。
「ハン、なかなかよくやった・・・攻撃する者は、勝たねばならん。防御する者は、あくまで生き延びねばならん」

攻撃を決意した人間は勝つことを義務づけられる。それは永遠に続く、許されざる宿命のようなものか。
負けることも、死ぬことも認められない。殺されるまで勝ち続けなくてはならない。その戦いはすでに地獄の道だ。
防御するものに勝ち負けはない。ただ身を守れさえすれば、それでいい。
生きることを最初から認められている。戦いそのものを義務づけられていない、とも言える。
人間の戦いに、真の勝者などはいない。
力と技に優れた者は、いつか抹消される。
生き延びた者は、せっかく拾った命を決して粗末にしないことを固く誓い、敗者の悔しさなど捨て去って二度と戦わない。
人間は命だけ、まとっていればいい。
どんな戦いであれ、勝利という悪魔が君臨している限り、人間には不幸と敗残しかありえない。

僧はジョニーを医者の元へ運んだところを逮捕される。
冷血なガードマンのボス、エドワーズは僧を私刑にかけ、ヤングブラッド達の隠れ家を吐かせようとするが、僧は口を割らない。
翌日、鉄道会社の本社から重役のハリスが派遣され、留置所の僧に州知事が認めたヤングブラッド達の特赦状を見せる。会社は、彼等のこれまでの罪を許し、和解しようと方針を変えたのだ。
僧「・・・あなた方が悪いことをしたのに、相手を許すと言うんですか?」
ハリスは誤魔化そうとするが、僧は納得しない。
僧「農民達から土地を取り上げて、その代償が、これだけですか・・・たった!」
最初に提示した保障金が不当に安かったから、彼等は命がけで抵抗しているのでは?と問いつめる。
僧「それじゃ、あなた方がやるべきことはまず、それを正すことです」
僧の毅然とした態度にハリスは会社側の非を認め、改めて誠意をもって保障交渉をすると約束する。

犯罪も紛争もトラブルも、常に中心にいるのは加害者だ。
なぜなら、いつの時代も、権力こそは最大の加害者だからだ。
被害者は、加害者という名の権力者に許されるだけ。
その代償も保障も、加害者によって認められているだけ。
戦いのあるところに、正義などはない。
すべての勝利は、権力者達の掌中でしかない。
人を許せるのは戦わない者だけだ。
彼等は正しいがゆえに、いつも不当な立場を強いられ、そこでなお揺らぐことなく、生きているのだ。

医者の手当てを受けて歩けるようになったジョニーは、しかし僧から和解の話を聞いても半信半疑だ。ヤングブラッドが信じるだろうか、と迷っている。
僧「彼が平和を望まなければ、残念に思いますか?」
「戦うと誓ったからね・・」
僧は回想する。ハンとの試合後、彼との仲がギクシャクしだしたと、老師に相談する。
僧「友の誓いを立てました」
「ハンとの友情か?」
僧「そうです」
「だが、その絆は薄れた」
僧「昨日の勝負で、ハンが私に負けたせいですか?」
「喪失感を覚えるか?」
僧「はい」
「誓いはどうする?」
僧「誓いは永遠です」
「しかし友情は二人の同意があって、初めて成立するものだ。誓いを立てるには、その対象について、よく考える必要がある。誓いとは、不可能を可能にするためにあるのだ」

誓いは尊い。しかし一方では恐ろしい。
誓いが人間を変えて見せる。誓いが崩れることで、相手が歪んで見える。
何のための誓いか・・・なぜ永遠でなくてはならないのか・・・。
不可能を可能にすることが、いつも素晴らしいとは限らない。
むしろ誓いの拘束が、可能な心を不可能にしてしまうおぞましい呪いを秘めている場合もある。
同意とは危険なものだ。
二人の人間の心は、底無しに、近くて遠いものだ。
僕は誰とも誓いを立てない。
不可能なものを可能にしようとは、もう思わない。
人間の心は、不可能であって、いいんだ。だから人は、絆に祈るんだ。
一人でしかないからこそ、僕はそう思いたい・・・。

エドワーズは和解の意志を示すために、僧とジョニーに連れられてヤングブラッド達の隠れ家を訪ねるが、それは罠だった。会社の意向を無視し、あくまでヤングブラッド達との決着をつけるべく、後を尾けてきたエドワーズの部下達が襲撃をかけてきた。
外では激しい撃ち合いが始まり、もう信用出来ん、と激昂するヤングブラッドに、僧が叫ぶ。
僧「なぜあなたは争いを続けたいんですか?!」
だが、エドワーズは言う。
「これだけ長い間憎み合ってきて、今さら手を握れるはずがないじゃないか!」
ヤングブラッドも答える。
「・・・そうかもしれん」
僧は老師との問答の続きを思い出す。
僧「ハンは昨日の試合に負けたことをまだ怒っています。ハンの憎しみに対して私は、何で答えたらいいのか・・」
「愛以外のものはない」
僧「・・・・」
「・・・友達が自分にひどいことをした、一方がそう思えば友情は失われる」
僧「私は何もしてはいません。ハンの誤解です」
「人はそれぞれ友達を、そして敵を選ぶ権利がある。あるいは愚かしい選択をするかもしれん。しかしそれを決めるのはその人間自身だ。それによってどういう結果を招こうとも、選んだ人間自身が、耐えねばならぬことだ」

僕は長い間沢山の人を憎んできた。今なおその憎悪は消えず、手を握れる人なんて、どこにいるのか・・・。
それを決めてきたのも僕だ。
相手が自分にひどいことをした、そう一方的に思い込み、友情を否定してきたのは、いつも僕自身だ。
愚かしいだけの選択だったのか。
僕はそんなに愛のない、誰であろうとすぐに敵とみなしてしまうような狂犬だったのか。
けれど、僕を敵と見た人間も沢山いた。ただの一人も友情を感じてはくれず、一方的に僕を嫌悪するだけの人間達が僕の周りには、大勢いた。
彼等にとっても、それは正しい選択だったのか。
彼等自身が、それに耐えるなんてことがあったのだろうか。
僕には愛がなかった。その分、耐えるしかなかった。
しかし僕を友達として選ばなかった人々は、僕を敵とさえ認識していなかった。だから、耐える者など、一人も存在しなかった。
そうだ、彼等は選択という意識さえなかっただろう。
僕が愛されなかったのは、彼等の権利であり、自然だった。
僕が愛さなかったのは、僕の因果であり、自ら招いた苦行だった。
耐えるのは、いつも僕だけだ。僕の人生の結果には、僕しかいないんだ。

いつ果てるとも分らぬ銃撃戦の中、僧はなおもヤングブラッドに訴える。
僧「この人はメンツにこだわっているんです。あなたはどうですか?和解への努力をしようと思わないんですか?」
苦悩するヤングブラッドに、エドワーズが隠し持っていたピストルを向ける。
「俺もプロだ。引き受けた仕事はメンツにかけてもやり抜くぞ」
僧「人を殺して、何の得があるんです」
僧の蹴りに、あえなくはたき落とされる凶銃。
僧「さあ、終わりにするんです。争いをやめなければ。和解するんです」
ヤングブラッドはエドワーズを連れて外へ出ると、撃ち合いをやめさせ、こう宣言する。
「みんな聞け!鉄道側の提案を受けることにした。争いはやめたいんだ!」
エドワーズは、構わず皆殺しにしろ!と部下達に向かって叫ぶが、もう誰も撃たない。
僧「終わったんです・・」
エドワーズはなおもただ一人、撃て、撃て、と絶叫し続ける。その声はやがて哀れな涙声に変わって・・・。

プライドは人を争わせる。つまらない誇りほど、決着をつけたがる。
すべては権力者のエゴだ。
リーダーともカリスマとも成り上がった無力な者が、餓鬼のように騒ぎまわっているだけだ。
終わりにすることは、引き金を引くより遥かに難しい。
それは時に、哀れなほどみっともない。
戦う方が、かっこいいだろう。
勝者はさらに栄光だろう。
人を打ち負かしての、名誉。
その心を折って奪った栄冠と地位。
そんなものが何だ?
人間はそんなもののために、死にに来たのか?
無限に付きまとう権力のかけ声に踊らされて・・・我に帰って涙することは、決してみじめではない。

農民達は新しい土地を得て、自由になった。これで町の中を堂々と歩ける、もう逃げ隠れすることもない、と笑顔で語り合っている。
ヤングブラッドは言う。
「鋤を手にして畑を耕すなんて何年ぶりかな。やり方を忘れたかもしれん」
僧が言う。
僧「そのために、長い間戦ってきたんでは、ないんですか?」
「その通りだ・・・空気までが違うようだ・・」
僧「そうです・・・平和はいいものです」
鉄道が開通した朝、汽笛の中を僧はまた一人旅立っていく・・・。

平和とは、争いのない世界。
だのに人間は、平和のためと称して命をとり合う。
空気を変えるのは、いつの世も人間だ。
自然の営みを無視し、自分達だけの怒気で、風も空も、空気のさざなみも、汚してしまうのは、必ず人間だ。
人間くらい、その分け与えられた生き方を簡単に、延々と忘れてしまう生き物はいない。
僕も争いは嫌いだ。
そのくせ己の平穏のためと称して、人の心を殺し、存在を消してきたのだ。
僕の吸う空気はすっかり濁ってしまった。
とりかえしのつかないほど、僕の風も、空もさざなみも、真の平和から遠くはずれてしまった。
忘れるどころではない。
僕には振り返る何モノもないんだ。
新しい土地も、再び掴みとる自由もないんだ。
僕には乗れる汽車もない。途中下車する駅もない。
鉄路の上を歩くだけだ。
誰も真似しない、気付きもしない、そしていつか前からも後ろからも轢き殺される、そんな一人旅に追われるだけなんだ。

生も死も、選んでしまったのは、僕のようだから・・・。









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