AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS ここはどこだ?

<<   作成日時 : 2006/06/28 20:24   >>

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またテッペン越えた。それは別に構わなかった。
問題は帰りの足だった。
ここはどこだ?
僕はどうやって帰ったらいいんだ・・・。

どこ?というほどの遠方でも僻地でもない。
たかが埼玉県だ。なぜかサイタマ、東京の隣だ。
要は時間がまずかった。平日の午前二時過ぎ。
撮影が終了し、僕はギャラとタクシー代をもらった。正直、都内まではかなりの距離だったので撤収待ちのスタッフ車送りを覚悟していただけに、ポンと渡された大枚は相当にありがたかった。
颯爽飛び出す騒乱のAV現場。
目指すは車道、快適ハイヤー、星空のミニドライブ・・・・。
ところがそうは問屋が下ろさなかった。徹夜ボケの僕も、じきに己の置かれたヒサンな状況を思い知らされて、愕然の目眩に襲われた。
ここは田舎だ。れっきとした郊外だ。閑散たる住宅地半分工場群半分。駅から歩いたらざっと三十分だ。
そんな場所を、こんな真夜中、走る車は何がある?
トラックだけだ。本当にトラックとかワゴン車とか、後はせいぜい一人乗りの自家用車かアベック車がチラホラ・・・。
タクシーなんて一台も走ってない。ただでさえ通行量の少ない車道だってのに、タクシーらしき天井ランプなんて、まったく見かけない。
タクシーの走らない町。つまり乗せる人ひとりいない無人の町。
ここはどこだ?
僕は一体どうやって帰ったらいいんだ?

実際マジメな話、こんなところで一晩明かすのかと思ってしまった。
とにかく駅と思しき方角へ車道に沿ってトボトボ歩いていくしかなかった。
仕事に行く時の僕の鞄はいつも重い。寒がりの汗っかきときているから普通の人の倍は着る物に溢れているのだ。オマケに持ってきた新聞、今朝キヨスクで買った週間プロレス、飲みかけのペットボトル・・・。
鞄の紐が肩に食い込む。靴の底が直接アスファルトに当たっているみたいに、体中の重量を感じる。
現場の疲れが、やりきれない徒労感となって膨張してくる。AV男優という仕事への屈折感が、おぞましい荷重となり、陰鬱にのしかかってくる。
タクシーが拾えないばっかりに・・・。
たったそれだけのために僕はとんだ使えない強力(昔、修験者の荷を背負って従う下男のこと)に成り下がった。タクシー代という万札を所持しながら手も足も出ない中年迷子だった。
実際、駅に向かって歩いているのかさえ確かではなかった。たとえ無事に最寄り駅へ辿り着けたとしても、始発まではまだまだ中途半端に時間が惰眠していた。
それでも僕は歩くしかなかったのだ。道ばたに突っ立って手を上げる用意だけしていても事態は何一つ進展してくれそうな気配がなかったからだ。

それくらい途方もなく絶望的な気分だった。幸運を待ち望めない無情の町だった。
コンビニもない。スナックもない。パチンコ屋もない。交番もない。
灯の落ちたガソリンスタンド。わずかな照明を残したラブホテル。
いっそこのカネで泊まっちまうか・・・もう三時前だっていうのに?明日も午前中から現場だっていうのに?
こんな町でこんな時間にヤりまくってる連中なんているのか・・・いるんだろう。車庫にはちゃんと数台、文明の利器が鎮座している・・・。
僕には車もない。バイクもない。今は自転車すらない。
あるのはAVで稼いだカネだけ。女の子を泣かせることで、領収書と引き換えにもらったキャッシュがあるだけ。
僕にはこんなザマがふさわしいのか。僕はこのまま、無人の惑星を一晩中彷徨っているしかないのか。
それにしても、ここはどこだ?
僕は一体全体どこへ帰ろうとしているんだ?

車道だけは三つもある。高速に乗り入れるためのぶっとい道路が、中央を伸びまくっている。
何のことはない、そこでだけタクシーを見かけるのだ。ランプを光らせた普通車が規則正しいテンポで、ど真ん中の道を闊歩しているのだ。
無駄と知りつつ手を上げてみる。道路と道路のほんのわずかの隙間に突っ立って掟や破りの送られ狼を決め込んでみる。
停まるはずがない。ひいても知らんぞ!とばかりに、疾走していく嘲笑のデッドヒート。
ひょっとしてまさかそんなところにこんな時間に、人がいるなんて気付いたドライバー、誰もいなかったかもしれない。一歩間違えていたら、横断違反でひき逃げされた最低ドジのAV男優として、その名をサブカルチャー界に残してしまうかもしれない・・・んなワケないか。
にしても僕が、いつはねられてもおかしくない危険な場所でタクシー拾いに精を出していたことだけは間違いない。その馬鹿馬鹿しいまでの愚かさを、てんで自覚しえてなかったほど、僕の神経がまいっていたことだけは、ウソでも冗談でもない。
僕はこんなところで死ぬのか。
無法な、いや合法速度のドライバーに、スラップスティックのごとく、ふっ飛ばされて夜の藻くずと消えるのか・・・。
それもいいや。それも仕方ないや。
と、そこまで世迷い言を繰り返すくらい、僕はもう歩くことに疲れていた。体力的以上に、こんな途方もない天涯孤独の世界に耐えられなくなった自分を死ぬほど感じていた。
ひとりで生きてきたくせに。
孤独には充分過ぎるほど慣れ切っていたつもりのくせに。

いや・・・僕は死にたがっていただけだ。独力で生きてきたわけでも、孤独に打ち勝ってきたわけでもない、ただの臆病な自閉者だったんだ。
僕は一人旅なんて出来ない。
ヒッチハイカーにも流れ者にもなれない。
巡礼も行乞も、ホームレスにもかなわない。
僕みたいなちっぽけな奴をここまで追い詰めるのは、どこの町だ?
何て土地だ?
どういう惑星だ?
僕は追われるしかなかった。
ぶっくさ言いながら、半泣きで唸りながら、ヨタって行くしか、どうしようもなかった。
僕は何のためにここにいるんだ?
僕をどこへ放り出すために、こんなゴーストタウンがあるって言うんだ?


追記・・・およそ三十分歩いて(実際はそんなものだったのだ)僕はやっと一台のタクシーに拾われた。人助けも感心な中年運転手はカーナビを駆使し、裏道また裏道のスレスレドライブの末、二十分ちょいで僕を都内の自宅まで送り届けてくれた。
僕は文明の利器がなければ生きられない。
人間の知恵がなくては、ウチにも帰れない。
それを忘れたフリをしているから、バチが当たる。
僕の日常は、こんな程度の報いの連鎖に、なり果てている・・・。

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