AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS どこで戦う・・「燃えよ!カンフー」詩録

<<   作成日時 : 2005/12/04 10:28   >>

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「真実の価値とは何ですか?」「人間を己の存在に結びつけることだ」「難しくて私にはわかりません」「真実というものは、口で語れるものではない。言葉の外に存在するのだ」「でも私達は常に真実を、語らなければならないのではないのですか?」「人の語ることはすべて、一部は嘘であり、一部は真実だ。語る人間が完全でなければ、語る言葉もそのすべてが、完全ではありえない」

僧は、ひとりの黒人が町のチンピラ共に絡まれているところに出くわす。黒人は見事な技で三人のならず者を打ち倒すが、銃で撃たれそうになり、僧が走り込んでの蹴りで助ける。ブラジル生まれの彼はカポエラの使い手だった。
その技は誰に学んだのですか、と僧は尋ねる。
「私に教えてくれた人は、ただこの技を、弟子達に教えたというだけで役人に撃たれて死んだ」
僧「・・・・勇敢な、方だったんですね」
「愚かな男だ。自分や家族のことより人のことばかり考えていた。私の愚かな父の話は・・ふん・・もうやめよう」
僧「・・・・・・」

カポエラ。
手枷を強いられた奴隷達が、足技だけで戦うためにあみ出した武術。歌に合わせての踊りに模して、秘かに普及させていった抵抗の格闘技。
それは無駄な努力だったのか。民族の誇りを守るための、愚かな行為だったのか。
生き残った者には、すべてが悲しい。

僧は一部始終を見ていた三人の子供の兄弟達から、何と、ある男を殺してほしいと頼まれる。その男は彼等の母親と婚約しておきながら直前になって逃げた。このままでは気丈な母親が男を追って殺しちゃいかねない。母親の代わりに殺ってくれないか、と子供達は無邪気に言うのだ。
僧は、愛していた人を殺したリしてお母さんは喜ぶだろうか、と諭し、とにかく男に会ってみることにする。
酒場でピアノ弾きをしているその男ゾリーは、子供達を母親の元へ返してやりたい、という僧の頼みに困惑してみせる。彼はその女性を真剣に愛していた。が、彼にはどうしてもやらなければならないことがあった。
ゾリーはアルメニア人だった。征服者に支配された国から七年前、一人命からがら脱出してアメリカへ来た。彼は以来ずっと心の中で誓っていたのだ。
「働いて、金を貯め、将来必ず、国に帰り、戦って、同胞を殺した政府を倒し、家族の仇を討つ。ゾリーは、臆病者ではない!」

ここにも民族の誇りを奪い返そうと願う人間がいる。ホれた女とキレイに別れることも出来ないのに、革命への想いだけは熱い。臆病者と、先に自分へ言い聞かせてしまう滑稽な悲しさ。生き残って、なお生きる者は、やはり切ない。

僧は少年の頃、少林寺の修行で高僧に棒術でいくらやってもかなわなかったことを回想する。
「闇雲な戦い方では、か弱い娘にも負けるぞ」
僧「申し訳ありません、先生」
「自分を責めることはない・・・何を怒っておる?」
僧「自分自身です」
「その理由は?」
僧「臆病だから、です」
「おお・・・なぜ、そう思った?」
僧「昨日、友達と市場へ行って、五人の巨漢に襲われました。私は怖くて何もできませんでした」
「少年二人に巨漢が五人だ。どうすべきであった?」
僧「友達を助けるべきでした」
「それは英雄的な行為だ」
僧「やはり私は、臆病ですか?」
「臆病とは、弱点をかばう知恵。勇気とは、長所を生かす知恵。
人の中には、臆病者と英雄が共存する。臆病者と英雄を分けても、意味はない。人は、そのどちらにも、成り得るのだ」

臆病者にして英雄。英雄にして臆病者。勇気も臆病も、裏表の生きる知恵。
僕は英雄にはなれない。でも臆病者でも終わりたくない。
だったら一体何だ?
ただ悲しいだけの、技も宣誓も出来ない僕は、いつまで生き残っているのか。

ゾリーは言う。
「だから結婚はできない。自由でいなくては。いつか祖国に戻り、不正と戦うために」
僧「・・・・」
「あんたも白人と東洋人の親を持つなら、いろいろ苦労してきたろう?」
僧「不正は、どこにでもある・・・あなたも、ここで戦うべきだ」
「・・・私にはアルメニアしかない・・・必ず帰る」

誰もが夢を見る。どこかへ跳び立ちたいと願う。
ここではないどこか、ここではないあそこ、そこなら、ここではないところなら、戦える、頑張れる、何でも出来る。
そうやって、ここで、一生を終える。
ここ、はどこにでもあるのに。どこへ行っても、ここ、なのに。
僕は戦わない。ここ、からも動けない。
だから、いいのか。これで、いいのか。
絶望は、どこにでもある。

それでも何とか僧は、子供達を馬車で家へ送り届けることだけゾリーに渋々納得させる。ところが戻ってみると子供の一人が底無し沼にはまり、助けようとしたあの黒人共々溺れ死ぬ寸前だった。僧は命綱代わりにするため、近くに生えた太い木の枝を手刀で叩き折る。
幼き日に高僧は、こう教えたのだ。
「口に平和を説く者は、その身に、武器をつけてはならぬ。
人に平和を説く者は、弱くてはならぬ。
十本の指を、十本の短剣とし、両の腕を槍とし、そして両の手のひらを、斧とするのだ!」

平和。
僕が口に出来る言葉ではない。武器もつけられない弱さ。
戦わずして生き残っている、故郷失き者。
卑怯者。

僧が二人を助け出したところへ、連邦保安官がやってくる。町の保安官を殺した容疑で黒人を追ってきたのだ。だが、黒人は僧に何か激しく言いかけながらも再び逃亡する。彼も僧を追ってたまたまそこへ来ていたらしい。
ゾリーは、子供達を家まで送るが、母親に会いたくないため手前で下ろす。子供の一人が「ゾリーの弱虫!」と、叫ぶ。ゾリーは辟易しながら言い返す。
「ゾリーは、弱虫ではない!僧にはちゃんとわかっている」
僧が言う。
「ゾリーには夢がある・・・古い夢が・・・」

古い夢。
人間は変わる。変わってしまう。だのに夢だけは変わらないと勝手に思う。古びてしまったものを後生大事に抱き締めている。
僕の夢は死んだ。
僕だけが、変わり果てた。

そこへ母親が帰ってきてしまい、彼女の顔を見たゾリーは、結局気が変わってしまう。とうとう結婚して、ここで一緒に暮らそう、と決心する。
だが、先回りしていた黒人が、僧達に銃を向ける。
彼は、自分の宝であるダイヤモンドを返せ、チンピラ共と格闘した時に無くした、僧が自分を助けたのは盗むためだったんだろう、と迫るのだ。
僧「私は、知らない」
「死にたいのか?」
僧「いや」
「なら引き金を引かせるな。ダイヤモンドは俺の命だ。俺が生きるのを支えてくれる、たったひとつの希望だ」
僧「あなたが、石コロ一つを、失ったからといって、なぜ生きられないのですか?」
「お前の言うその石コロしか、今の俺には信じられるものが無い。俺がなぜあのダイヤモンドを盗む気になったか、わかるか?あれのために、なぜ人殺しまでしなきゃならないか、わかるか?」
僧「・・・・・」
「俺はただチャンスが欲しかった。俺の才能を生かすチャンスを公平に与えてほしかった。だが俺にわかったのは、奴隷の息子には無理な話だということ、一人前の人間として扱ってもらえないってことだった」
僧「・・・・」
「だが、あの石がすべてを変えたんだ。あれは土の上に落ちていた。俺はそれを手の上にのせて、父や祖父や、そして何世紀にもわたって、俺と同じ黒人の、大勢の仲間のことを・・・」
僧「・・・・」
「・・・考えた。それで俺は、盗った。このままでは帰れん。あの石が俺にとってどれだけ意味のあるものか、お前にわかるか?」
僧「わかります・・・でも本当に、知らないんです」

たかが石コロ。それが一人の人間を、いや民族を歴史を、運命を、変えてしまう。唯一の希望、命の支え。
こんな現実を作り上げたのは、誰だ?
こんな馬鹿馬鹿しい法則をこしらえたのは、何だ?
人間を狂わせるものが、どうして同じ人間なんだ?

石コロが、笑っている・・・。

僧は隙を突いて黒人の銃を蹴落とし、ふたりはカンフー対カポエラで戦う。
そこへ黒人に絡んだチンピラが、今は保安官に成り上がって現れ、黒人に銃を向ける。奴は、黒人があやまって死なせてしまった保安官の従兄弟だったのだ。
「邪魔だ。そこをどけ」
僧は黒人をかばう。
僧「彼は銃を持ってはいない。撃ってはいけない」
「法に楯突く気か?」
僧「法に従うなら裁判にかけるべきだ」
「邪魔すりゃおめえも殺るぜ。こいつはな、俺の従兄弟を殺した。だから殺す。おめえは、どけっていうのにどかねえんだ、仕方がねぇ」
僧「・・・・」
その時、ゾリーが割って入る。
「やめろ!」
震えながら彼は続ける。
「そんな無法は許さんぞ。彼等にも権利がある。もし二人を撃つなら、その前にこのゾリーを撃て」
ゾリーの横に僧が立つ。母親も毅然として並ぶ。
連邦保安官が現れ、銃を制し、黒人に、身柄の安全は保証する、公正な裁判にもかける、と言う。
「確かに殺した・・・だが事故だったんだ・・・やる気ではなかった・・・」
黒人は、僧とゾリーと彼女と子供達に「ありがとう」と言い、彼等は握手を交わす。

アルメニア人、黒人、そして清国人。
人種の坩堝アメリカで、銃と差別の大国で、彼等はつどった。一緒に命を賭けて戦った。そこにはダイヤモンドもない。民族もない。国境もない。
あるのは人間だけ。目の前の人間を尊ぶだけ。
人は臆病で悲しい。生き残っていくことは、もっと辛い。
だから手を繋ぐのだ。勇気を持って並ぶのだ。
僕には握手してくれる人もいない。横にも前にも立ってくれる人はいない。
でも・・・「ありがとう」と・・・死ぬまでには・・言ってみたい・・・。

ゾリーは彼女に結婚を申し込む。一生アルメニアへ帰れなくてもいいの、と彼女は問う。
「ああ、ここにいても戦える。不正はどこにでもあるんだ、ここで戦えばいい」

人は人のために戦える。愛する者のために生きていける。
僕も誰かを愛している。AV女優でも、風俗嬢でも、メールをくれる誰かでも。
ここ、が僕だ。
僕にしかない不正のために、僕は生きている。戦えないけど、精一杯ビクつきながらも語っている。
誰かのために。聞いてくれる誰かの心に。

結婚式の後、僧は子供の一人からダイヤモンドをこっそり渡される。黒人がチンピラ達と格闘していて落としたのを拾ったまま、返しそびれていたのだ。
「拾ったものは返さなくっちゃ、いけないんだよね」
僧「本当の、持ち主に返してもらおう」
連邦保安官にその石を託して、僧はまた旅に出る。

本当の持ち主は、返すべき真実は、どこにも描かれない。
しかし僧は振り返ることなく、黙って去って行く。
真実は、口では語れない。
真実は言葉の外にある。
人は、己に近づき、他者と結びつくことで、真実を知り、戦うことが出来る。生きることが出来る。
夢も過去も、石コロも、なにもいらない。






















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