AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 役名は不本意キャラ

<<   作成日時 : 2005/09/05 20:16   >>

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「我々は水商売でもないのだ。るんぺんだ。るんぺんに休みはないのだ。いや、るんぺんは毎日が休日なのだ。しかしるんぺんも疲れるものだ」

凄い豪雨だった。夜でよかった。出掛けてなくてよかった。仕事が入ってなくてよかった。
確かになにか防災放送が流れていた。避難勧告?激しい雨音でほとんど聞き取れなかった。ままよ、どうせここら辺は高台もどき。さっさと寝てしまった。
氾濫したとかいう川のすぐ近くに住んでいたことがある。今だったらとんだ漂流民か。
冗談じゃない。一気に殺してほしい。容赦なく呑み込んでほしい。
先週、近所で火事があった。ボヤ程度だったが、三件先のアパート。一時騒然となった。でもなにもしなかった。サイレンと騒ぎで眠れない間だけ窓から眺めていた。多少おさまると、すぐに寝てしまった。
引っ越す度に火事に逢う。二件先の古アパート全焼。同じ階の四部屋隣で夜のボヤ。
いつだって逃げなかった。平気で焦げ臭い煙を吸い、消防士の動きを目だけで追い、ヤジウマをぼんやり見下ろしていた。
なにもする気が起きなかった。今さら、なにを?もういいじゃないか、死んじまっても。避難だの復興だのウンザリだ。いい機会、ひと思いに殺ってくれ。苦しまないうちに、構わないから、このろくでなしの、息の根を止めてくれ。

「いずれにしても、我々が生を受けたということは、ある役割を課せられたということでもあるのだ。自分は選んでこんな容姿その他諸々を得たわけでもない。しかしながら、ともかく、いや、せっかく生まれてきたのだから、ありがたくそれを拝受し、何とか与えられた役割りを全うするよう努力しようと思うわけで、これが積極的に生きるということなのだろう」

山崎努氏の「俳優のノート」(メディアファクトリー)をまだしつこく読んでいる。
役割。
僕も人の人生とはそんなものだと思っている。AV男優が僕の役割。厄病神のような孤独癖も僕の役割。徹底して人に嫌われてしまうのも、僕の役割。
ありがたく・・・とはやはりいかない。全うする気力もない。積極的も努力ももはや無縁でしかない。毎日がやるせない休日。それなのにどうしょうもなくヘトヘトに疲れる耐え難い、与えられた、課せられた、役割。
いつアッサリ逝っちゃってもいいんだ。それも僕の役割なんだ。

そのはず、でいるのだが、僕も一応はルンペンらしい。休みがないらしい。
時々思う。いつもいつも言葉嬲りの現場ではない。自分の持てる全精力を目一杯ぶつけなければならない現場なんて、せいぜいふた月に一度あるかないか。
すると時にはかなりのブランクが生じる場合もあるわけで、そんな時は一体どうなるのか。
これが自分でも呆れるくらい、いつもスンナリと鬼畜モードに変換してしまうのだ。
もちろんカメラが回りだすまでは唸りだしたいほど緊張する、失敗への恐怖に震える、不発と限界の予感に頭をかかえる。
だが、結局は杞憂に終わるのだ。出来映えに多少の差はあっても、少なくともまったくの無能で終わることはない。言葉がさっぱり出なくなるとか、女優に逆にやり込められるとか、そんなことは今だに一度もない。
これはどういうことだ?
常日頃からネタ集めしてるとか、思索にふけっているとか、ましてリハーサルやボイストレーニングの類いなど、もちろんやっていない。日常の努力もなにもしないで、まさにルンペンのごとく怠けまくっている。積極性のカケラもなく、みじめにくたばるのを待っている。
するとこれは、いよいよ僕の、何だ?永久不変の役割というヤツか、一世一代のハマリ役ということか、言葉嬲りが、女優泣かせが、人格崩壊テロリストが?

「感情のアクロバット。日常ではあり得ない感情や意識の飛躍を体感し表現しなければならないのだ。しかし、基本にあるのはあくまでも日常の感情である。日常の感情を煮詰め、圧縮したものが舞台上の感情なのである」

この下りに引き付けられた。基本は日常?
僕はこういう本を熱心に読んでいるくせに、舞台劇が苦手だ。シェイクスピアも新劇も、小劇場も歌舞伎もミュージカルも苦手だ。一切見ない。
何よりかにより、あの大仰なセリフまわしが駄目なのだ。ワザとらしくてクサすぎて、リアリティの片鱗もないオーバー全開のお芝居大会が生理的に受け付けないのだ。
その舞台劇の第一人者が、かく語りき?
「演技を作り上げる材料はあくまで日常にある」?
「演技の修練は舞台上では出来ないのだ」?
「大切なものは自分の日常にある」?

「俳優たちは熱心に稽古をし、舞台に立つ。そしてせっせと劇場に通い他人の芝居を見て勉強する。戯曲を持ち歩く。芝居芝居。芝居のことしか頭にない。いつも演劇に接していないと俳優でなくなってしまうという不安があるのだろう。芝居に係わっている時間以外の日常の時間は全て不本意な時間、というわけだ」

僕も似たように考えていた。インスト時代は明けても暮れてもトレーニングと肉体改造の日々、いや強烈なその想いだけ、ノイローゼのような勝手な思い込み。
男優業と作家修行の頃は、AV誌を隅から隅まで、話題作見まくり、書けても書けなくても一日中机参り、椅子の上の念仏。
不安だったわけだ。ほかのことをして過ごす時間が、まさしく不本意としか感じていなかったのだ。それくらい病んでいたんだ。

「(映画やテレビの)撮影現場で(新劇とかの)芝居の話などやめるがいい。目の前にいる人、今起きている事に興味を持つことだ。面白いことがたくさんあるじゃないか。日常に背を向けてはいけない」

もちろん僕の現在はこの下りにはほど遠い。他人にも、目の前の出来事にも、正直無関心だし、面白いことなんて、一体どこに?
だが、僕の場合はそれこそ変則なのだ。異端なのだ。
「(新劇俳優の)彼等はカメラの前で精彩がない。疲れきっている。不本意な時間が苦痛なのだ」
日常の僕に精彩はない。不毛な生活の永遠に疲れきっている。とことん苦痛にまいっている。
しかしこの不本意な時間の集積が、溜まりに溜まった鬱屈が、僕の爆発を引き出すのだ。
呪わしい膿の放埒が、AV女優への尖鋭な言葉責めとなって、「感情のアクロバット。日常ではあり得ない感情や意識の飛躍」を産み落とすのだ。

なんとも不可解な矛盾。
厭世の極みにある僕が、その吐き溜めをエネルギーに代えて、女優を泣かせる。
むしろさえないブランクが長ければ長いほど、止めどない情念の塵芥が、ゴミの山をブチまけるみたいに、女体と精神をとことんまでイタぶり抜く。
なんてこった。
これが僕の本当の役割。十八番の万年キャラ。
無関心じゃないんだ。誰だろうと他人を常に切り捨ててるんだ。叩き壊してるんだ。
面白くないんじゃないんだ。面白がることを敵視してるんだ。楽しむなんてことを陵辱してるんだ。当たり前の幸福を虐殺したいんだ。

「やはり、人は皆、己の身丈にあった感動を持つべきなのだ。読みかじったり聞きかじったりした知識ではなく、自分の日常の中にエキスはある。我々はもっとそのことを信じなければならぬ。日常を見据えること」

僕の言葉責めに受け売りはない。なにを読んでも聞いても、目の前の女優たちへの惑乱した憤りは変わらない。
それは僕の日常から狂い咲いたもの。この忌わしい日常を毎日毎日反吐をもよおしながら見据えて来た結果、僕のなかから蛆のごとく湧いて出る、劣情のダイナニズム。

「自分は、自分からこの役を演りたいと申し出たことは一度もない。決められた枠の中でしこしこと生きる工夫をすることが楽しいからだ。役という枠があるから面白いのだ。役を自分で選んでしまったら、その面白さは味わえない」

だから僕は役者になれなかった。決められた枠をどこまでも拒否した。
自分で煩悩のままに選ぼうとするばかりで、しこしこと生きる工夫をしたがらなかった。当然面白くなるはずがなかった。生きる面白さをとうとう味わうことなく、ここまでルンペンだ、AV男優だ、不本意なキャラクターに、どっぷりハマッてしまった。

これもまた僕の身丈だろうか。僕だけの人生の感動だろうか。
さあ・・・。
わからない。わかりたいとも思わない。これもまた、僕の役割の一部だろうから。

「もっと落ちるかもしれない。”どん底だ”と言えるあいだはどん底じゃない」
                シェイクスピア「リア王」(訳 松岡和子)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ビデオの中で観た貴方と、ここでの貴方が違い過ぎ
どうしても混乱させられるのです。
しかし、その「不可解な矛盾」に深い関心を覚えます。

天気がいいから。美味しいパン屋を見つけた。
ただそれだけで、幸せな気持ちになれる自分がいます。
そして「当たり前の幸福を虐殺したい」の言葉に
共感する自分もいるのです。
まい
2005/09/05 23:52
ありがとう。
そうですか。よく言われます。どちらも僕です。そしてどちらでも愛されず嫌われるだけ、はかない関心を持たれるだけ、もやっぱり僕です。僕の役割です。
どちらにも、当たり前の幸福なんてありません。不本意しかありません。
でもだからこそ、信じたい。愛したい。伝えたい。感じてほしい。
それだけです。
辻丸耕平
2005/09/06 12:58

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