AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

アクセスカウンタ

zoom RSS たった一発の崩壊

<<   作成日時 : 2005/09/28 19:36   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

五分で終わった。あっと言う間のワンコーナー。ひょっとしてカットされるかもしれない。責任は僕だ。掟破りのビンタ一発。撮影は見事に崩壊した。

電話で女優の名前を聞いた時から嫌な予感しかしなかった。単体アイドル。それはいい。ただ四本目かで共演した折の印象が悪過ぎた。見た目は可愛い。性格はキツい。挨拶はしっかり。元気はある。明るいし体も綺麗。でもそれだけ。
ハキハキしている分言葉が強い。さっぱりしているだけ容赦がない。嫌なものは有無も言わさずイヤ!ミニインタビューで、箸の使い方がちょっと変、と指摘しただけで、あっそれ触れないで下さい、なんでもいいからとにかく触れないで下さい!キッパリ。
痣があるとか訛りがどうとかのコンプレックスでもあるまいし、その冷たい言い放ちに一瞬たじろぎ、また不快を覚えた。カメラは回っている。他に言い様があるだろうに。何もこっちは暴き立てようなんて魂胆はない。NGならその部分はどうせ使わない。そこまで敵意剥き出しで食って掛からなくてもよかろうに・・・。

何気ない一言に心底ムカつく経験は僕にもある。五年前インストを辞め、トレーニング三昧の日々に燃え尽き、しばらくヤケ食いした。当然5キロくらい太り、見っともなく腹も出た。そんな頃、現場で着替えていると、さほど親しくもしていない男優からこう言われた。
ツジマルさん、太りましたねぇー。
大きなお世話だ。飲み過ぎでもカウチポテトでもない。信じた者共からの裏切り、永年自分の生活を支えてきた芯のようなものからの挫折、脱落。泣きながら食ったんだ。吐きたくて漁ったんだ。その結果がみじめなこのザマなんだ。
笑いながら言われることじゃない。何も知らないアンタに馬鹿にされる筋合いはない。
ほんの一瞬、僕は暴力の誘惑にさえかられた。
しかし実際は苦笑いと無言で穏便にすませた。控え室だろうと、そこは仕事場だった。
彼女とは違う。

四本目で僕がフェラされるシーン。過不足のない仕事ぶり。少しエロ度が低かった。湿り気が足りない分、肉が擦れるみたいで痛みが伴った。このままだとイキにくい。
もっとツバ垂らして・・ベチョベチョにしてごらん、音立てるくらい濡らしてごらん、もっと・・口離して、ツバいっぱい・・・ベチョーッと・・・。
「唾出ないんですけど」
ドラマ物だった。彼女の役どころからしたらそのアドリブは不似合いだった。つまり彼女の素の言い訳。出ないものは確かに仕方がない。でも何かお茶でも口に含むとか、出そうとする努力はしてほしかった。出来ないものは出来ない。それで何もかも済まされては作品に進歩がない。モザイクがかかっている以上、音は重要だ。しゃぶり上げる音をたてるのもAV女優の基本テクの一つだ。単体でこれから大いに売り出すつもりなら、少なくともそれだけの期待を込めて沢山の大人達がプッシュしていると感じているはずなら、一言でチョンにしてほしくなかった。頑張る姿勢を見せてほしかった。出来ることだけを出来る範囲でこなすのが、頑張りと言えるだろうか。僕はますます萎え、絞り出すような苦行にヘトヘトだった。

他の男優との絡みもそんなもの。イッたことがないと言う彼女がどこまで素直にローターやバイブに身を任せていたか。僕には疑問だった。
そして数カ月ぶりの再会も実に静かなフェラ撮りの際中だった。十人近い男達の中で、足音ひとつ立てられない冷え冷えした空間を彼女の口吻仕事が作り上げていた。
予感は早くも膨らんだ。
そのくせメイク室に戻るや、彼女のけたたましい嬌声が廊下の先の僕の控え室まで聞こえてきた。元気なものだ。
メイク室の前で会った彼女は僕のことを覚えていた。笑顔で挨拶してくれた。僕は同じ子と二度以上共演したことは滅多にない。もっとうれしがっていいはずだが、僕は軽く笑顔を返しただけで、トイレへ逃げ込むように彼女から離れた。

最近は特に現場での再会が少ない。たまにあると絵に描いたような悪夢になったりする。
去年、ドキュメントの企画があった。僕と疑似恋愛になれそうな子を用意したので撮影前に顔合わせすることになった。指定された喫茶店。ひどく混んでいた店に入った瞬間、僕は目眩を覚えた。二度と会いたくない、と思っていた女優がそこにいた。
彼女には先週のある現場でバイブ責めした。目隠ししてどこまでイカせられるかの、性感プレイだった。彼女は泣いた。最後までかたくなな反応だった。いい絵は撮れなかった。終わってマネージャーが声を荒げた。
痛い、と言ったのにやめてくれなかった!
僕も痛いとは聞いた。その度に場所をズラしたりボリュームを緩めたりして、また様子を見ながらすすめた。彼女はストップをかけなかった。オモチャ責めがメインのコーナーだと前もって丁寧な説明を受けていた。
痛くても我慢しろ、とは言わない。痛くては感じるわけもイクわけもない。
だが彼女は最初からずっと抵抗してきた。肉体で拒否のしっぱなしだった。そのくせはっきりした意志を伝えず黙って不貞腐れて泣いてジャーマネに言い付けた。
よりにもよってその女優が奥の席に座っていた。監督と向かい合って笑顔で話していた。隣にはあの日のジャーマネもいる。
とりあえず遠くからどんな子か見ていてほしい、という監督の事前の打ち合わせに僕は心から感謝しホッとした。もし直接顔を合せていたらどんなに最低最悪の気まずさが待っていたことか。
彼女に気付かれないよう背中を向けて、味もしない紅茶をすすりながら僕は徐徐に込み上げてきた憤りに体を唸らせていた。
なんであの女なんだ、せっかくの好企画、この上なく楽しみにしてきたのに、何だってあの女優が選ばれてるんだ。企画のAV女優なんて腐る程いるのに。よほどの性悪オンナであっても初めてなら付き合い方次第でどうにでも転がるのに。それがドキュメントの悪魔的な面白さなのに・・・
よりにもよって思い出したくもない筆頭の女優がまたノコノコ現れるなんて。どう逆立ちしてもうまくいく可能性はゼロに近い関係がまた巡ってくるなんて。
どういう偶然なんだ。どうしてこんな悪運しかやってこないんだ。なんだってここまで酷過ぎる仕打ちにしか僕の運命は見舞われないんだ。

小さなコーナーを軽くこなして、いよいよ本日最後のメニューの時間となった。
彼女は変わっていなかった。あれから数本出演したはずだが、監督やスタッフへのタメ口、出来ることしかしない動きの乏しい態度、そして僕のフェチっぽいお触りコーナーに対するボーッとしてなすがままのスカした反応。
再会時の屈託のない表情に一縷の希望を託してみたものの、仕事に向かうAV女優のプロ意識は大して成長も更生も望めそうになかった。
こんな子を今から言葉責めしなくてはならない。僕がここに呼ばれた理由はただそれだけ。
わびしかった。あの理不尽な喫茶店ほどではなかったにせよ、僕はまたどうにもならない自分の業を呪った。吐き捨てたかった。その気力さえ、絶望の疲れに萎んでしまっていた。
やるしかない。いつものように喋り散らすしか無い。
僕はスタートするまで彼女に目を向けなかった。このやるせなさを今からぶつけてしまいそうで何とか避けた。それは言葉嬲りとは違う僕の単なる愚痴でしかなかったからだが。

こうして始まった僕の定番コーナー。何かがおかしかった。僕の方向性がどこか最初から歪んでいた。
僕はルールは守る。言葉責め、とシナリオにあるのだから、罵倒のみで女を泣かせる。そうなるよう必死で努力する。それが仕事だ。
ところがこの日、僕はハナから自分の言葉にすがる気になれなかった。唯一にして最大の武器を使いこなすイメージがてんで湧いてこなかった。
この子じゃ無理だ。何をどう言っても柳に風、いくら怒鳴ろうとヘラヘラしてるだけ、どんなにこちらが本気でぶつかっても鼻で笑うか、生意気にスカしてみせるだけ。
いつものように仕事について、Hを売ってることについて、自分の淫乱さについて、説教口調で追求していきながらも僕はどうにもこういう想いから逃れられなくなっていた。会話を重ねれば重ねるほど、彼女の揶揄したような反応がどんどん膨らんできた。からかわれている屈辱感ばかりが僕に跳ね返ってきた。目の前に自分の真剣さを笑殺し、唾棄してあざ笑うだけのおぞましい他人が居座っているようにしか僕には見えなくなった。
このままじゃラチがあかない。こんな反吐極まる状況は耐えられない。
彼女はまるでこたえていないのだ。ずっと今まで通りの見下した、冷たい、嫌なものは嫌、馬鹿は馬鹿、勝手にやれば、アタシは出来ない、なーんも感じない、泣けったって、泣けるもんじゃないんですけど、そんなこと言われても無理なんですけど、出来ないものは出来ないんですけど、あっそれ以上やんないで下さい、なんでもいいからとにかくそこまでにして下さい・・・。
僕は前もって熟考した中での、苦し紛れのひらめきに賭けるしかなかった。
こういう子にはショックを与えるしかない。予想外のインパクトを感じさせるしかない。打ち合わせの範囲外の仕掛けで一気に動揺させるしかない。
少し早いかとも思った。もう少し言葉だけで粘ればよかった。僕の激高自体にもインパクトが不足していた。でも僕は唐突に飛び越えてしまった。
ままよ。
僕は張った。もちろん力は抜いて、あくまで目を覚まさせるつまりの平手打ちをふるった。僕にすればそれが開幕の合図だった。
ところが彼女は一変した。見る見る目が真っ赤になり、頬が強張り、僕をつり上がった憎悪で睨み付けた次の瞬間には、カメラの向こうに叫んでいた。
ちょっと止めて、止めて、止めてったら!叩くなんて聞いてない、何撮ってんの、止めてったら!

彼女がカメラの前で初めて見せた本気の顔。僕はそう思った。
しかし監督はすぐにテープを止めた。コーナーをやめた。僕に出るように指示した。
どっと入ってきたプロデューサーやADが泣きわめいている女優をなだめていた。
アタシ、ぶたれるのとか一番ダメなんだから!
僕は部屋の外にしばらくいた。単体女優は延々ひとりでまくしたてていた。スタッフは黙々と撤収にかかっていた。

終わった。終わっちまった。わずか五分の男優商売。
ひょっとして明日続きを、なわけはなかった。かつてのV&Rならそうしたかもしれないが、メーカーも監督も違う。女優のカットに従うしかないのがこの現場の基本条件。
驚いたのは、プロデューサーにつれられて彼女が謝りに来たことだ。
まだベソをかきながらもスイマセンを繰り返し、叩き返そうとしたことを詫び、またお願いします、と他の男優に対してと同じ挨拶をしてくれた。
これでNG男優は確実と覚悟していた僕は思わず跪いて両手を合わせた。
ゴメンね、つい責めのきっかけを作ろうとして、本当にゴメンね、こっちが謝らなくちゃいけないのに、君は悪くないんだよ、これからも頑張ってね・・・。

女優もスタッフもいなくなった一人だけの控え室で僕は平手打ちを後悔した。無能な自分を恥じた。
土下座したのは「懺悔の再会」(八月一日)に書いた「恥辱の公開色責め6」(ベイビーエンターティメント)の宮田ゆうき以来。
しかし、今の僕の心に懺悔はなかった。自分を恥じ入る気持ちは真摯に持っていたが、それはあくまで僕一人の世界だった。
責めのレベルが違い過ぎたからじゃない。
僕は宮田ゆうきは愛した。彼女に謝ってもらう必要などカケラもなかった。
今日の女優も思いがけずキチンと謝罪してくれたイイ子だった。後でジャーマネに泣きつくような子じゃなかった。でも彼女は撮影を止めた。イヤ!と同時に仕事を放棄した。もうあのシーンを撮り直すことは出来ない。
僕にはやはり、この子を愛することは出来ない。

それにしてもどうしたのだろう。アッサリ平手に頼ってしまった自分。とことんまで相手の心に食らい付いていこうとしなかった自分。
疲れてるのか。もうトシか。
いや、それは違う。
ますます飢えてるから、愛に渇望しているからこそ、その対象から外れた相手に対しては淡白に酷薄になっているのだ。そうに違いない。
昔に比べて本当にイイ子が増えた。AV女優に体当たりで取り組むプロ意識の高い子がどんどん出て来た。
だから・・・たまのハズレに、どうにもテンションが落ちる。
僕こそプロ失格だ。上辺だけの挨拶だの言葉使いだの、そんなものよりいつどんな状況でもベストを尽くして完璧な仕事に仕上げる事。十七年もやってて今だにこんな当たり前のことを・・・・。
いや、ガラじゃないか。
女優を愛せないと役に立たない素人男優。愛したって失敗ばかりの失格男優。
とっくに崩れちまってるだけじゃないか。
僕の存在自体が、もう現場を頭から崩壊させてるだけじゃないか。
だのに仕事が来る。懺悔する気などまったくない世間様、AV業界様から、忘れた頃の施しを受け続けて、明日も女優の前に行く。
愛したくて。愛されたくて。
ひどいもんだ。
















テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
たった一発の崩壊 AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる