AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 壁のなかの亡命者

<<   作成日時 : 2005/08/04 21:10   >>

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仕事でホテルへ行く。
ひと昔前なら歓楽街のラブホテルと相場が決まっていたが、10年くらい前から都心の超高層ホテル、が当たり前になった。いわゆるセレブの溜まり場?国際交流の坩堝?
もちろん正装オンリーの世界ではない。会員制ファッションが幅をきかせるもののあくまで流行ラウンド制。夏ともなれば空港直行のラフグループが明るいエセ難民。ビジネスマンのカクレンボには携帯と新聞が定番の小道具。時代錯誤な召し使いコスプレに、背広兵士のホテルマン、鎧スーツの歩哨レディかホテルウーマン・・・。

電車も大通りも繁華街も、なんのとまどいもなく素通りしてきたAV男優が、そのやたら天井の高い巨大な壁空間に迷い込んだが最期、異郷に紛れた亡命者の気分にいつもさせられる。
まず避けられないのが視線の意識。つまみ出されやしないか、という不安、撮影という秘密行為への罪悪感、たった2年で勤め人を放棄した落伍身なりへの恥の意識、そしてなにより、こんな上級なところへ来ていいのか、という強烈な貧の自意識。

プライベートでそのテのホテルを宿泊客として利用したことがまずほとんどない。全然ないはずもなかろうが、自閉的な記憶が除外しているところをみると、先天的に紳士社会へは無縁を認識してしまうタチのようだ。

回転扉にしろ自動ドアにしろ、まずその地を震わせる遮断音が気にかかる。わずか数秒の鉄の関所が重たい警門のようで、早くも立ちすくんでしまいそうな日陰の気分。
できるだけの自然な動作、平常心の態度も、広すぎるクリーム色の空間は容赦のないセリ舞台だから、たちまち歩幅は狂う、肩は乱れる、警戒の視線で余計な即発モードをあたりに振りまく。
まっすぐフロントに向かえない後ろめたさが、ホテルマンへの神経戦を、だが一応笑顔のサービスウーマンには、コスプレ気分の下心を隠せない未練剥き出しのオス目線。
大抵まずトイレに滑り込み、わざとらしいほど無意味な清潔と余剰にあふれた人気の少ない部屋でなおも不必要に体を踊らせながら用を足し、バカでかい鏡に蓬髪と卑屈の服飾ばかりを嫌悪し、備え付けのペーパーで濡らした両手をここぞと拭いて時間をかせぐ。
いや、個室で汗を拭いたり、電車内で読み終えた古新聞を丸めて捨てたり、のど飴の包み紙を灰皿にそっと落としたり、やること多様。
愚にもつかない忙しさを片付けてから、やっと自信を取り戻した気分で再び敵陣へ。多少のゆとりと安心感に守られながら、大抵集合時間には間があるから、できるだけ側にひとのいない、できれば奥か入り口かが見通せる席を探してソファーに腰を下ろす。
意味もなくゆっくりとキョロキョロする、招かねざる客。壁画もどき、大理石まがい、ことさら中央をぶち抜く乗ってないエスカレーター、巨大花瓶、オブジェ化した内装の岩石群・・・ありふれている、なんのことはない平凡な豪華造り、という気分の端から・・・でもなぁ・・・押しつぶされそうな自虐の感覚を呼び寄せてしまうのは、なぜか・・・圧倒され畏縮するのが自分の身分とでも自嘲したくなる懐かしい棄民の陶酔はどうだ・・・我ながら。

すでに撮影中の現場へ頃を見て連絡を入れる。一度で直通することは稀で、折り返しを待ちながらひとの流れと澱みを眺めやる。
一般という絶対の身分を着てうごめく、ちゃんとしたひと達。なんの問題もなく世間を動かし動かされ、止まらない時間をやりくりしながら一生働き家族を送り親類縁者を保ち、死ぬまでひたすら疲れることなく動き回る大した人々・・。
僕ははっきり負けを認める。笑いながら降参できる。

ルームナンバーは暗号と変わりない。やっとこの獄舎崩れの壁を切り抜けられる合い言葉を携帯越しに与えてもらうと、つい今までの脱力のザマが嘘みたいに、軽くないカバンを持つやさっさとエレベーターへ。
なぜかときどき一緒になるのは外国人だったりして、目を背けながらも、場所を譲り、一瞬のエレベーターボーイと成り下がり、これも民族代表の国際的責任なんて吹き出しそうなナショナリズムごっこで、妙な緊張の移動時間を自分でなごませ、やり過ごし、さて登ってみるとたちまちの地上遥かウン10回の空の途中。

自販機とかが置かれているガラスに面した長椅子スペース、必ず一息入れてみては、昼間の薄ばんやりした大都会、たまにしか見下ろすこともない金のとれる望遠カット、長くじっくり、でもどこか落ち着きのない斜視にとどまる気持ちの弱さ、底冷えのする不安と怖れ・・・ガラスにすり寄ることもゆったり遠い風景の豊かさに身を任すことも出来ない、逃げまくってきた者の本能的な脆弱さ、卑屈さ・・・。
教えられた部屋番号が、いつも通りあっという間に、AV男優という位、で救い出してくれることがわかっていながら、僕はギリギリまでそこにいて、いやしい生き恥の立場にしゃがんでいる。
どうせたまにの、ことじゃないか。でも本来はこんなザマじゃないか。元々のお似合いじゃないか。

一流ホテルをつかの間通り過ぎてきた僕は、どこか化けの皮を剥がされた、長い嘘を見破られた、不法滞在者のような、それもホッとしたにがい安堵に癒されている元逃亡者のような、唇に笑みを、瞳に背徳を、肉体に歪んだ誇りを・・・・。
あとはただ厚いドアをノックすれば、隠れ社会の一員として迎えてもらい、高過ぎる壁のなかでの虚言の自己申告は一気に霧散・・・いつまでこの無責任極まる悪運が続くのかと、恐ろしくなる理性さえとっくに無くした万年男優、人生場違いのAV落人・・・。

どうして、どうして生きてていいのやら・・・。

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