AV落人辻丸の言霊〜殉教録〜

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zoom RSS 六本木、3時間。

<<   作成日時 : 2005/08/17 21:22   >>

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今日はバラシか?もういいよ、とふて腐れていたら電話が鳴った。10時にお願いします。おいおい、これから?外は真っ暗。雨あがりの夏の夜。いつもなら僕の一日はそろそろ終しまい、ってのに・・・いやはや。

地下鉄はそれなりに人がいる。もっとガラガラかと思っていたが、まだまだ会社社会の時間は長いらしい。夜遊び風の女は一車両に一人ずつ。ロングヘアにスーツ姿の戦闘的な残業OLとは、隔離されたかのようなカラーヘア、グラサン、露出ファッションの挑発ゲリラぶり。共通点は双方、徹底的に周りの男族を排他しきったかのような棘まみれの雰囲気。こちらは目の保養、生きたグラビアとしての視姦にいそしんでいても、彼女達の逆値踏み意識は断固としてそんなバッタ男の貧欲、存在すら認めないのだろう。
それにしても電車は確実にダイヤ通り動いている。こうして日付けを越えてしまいそうな頃から、撮影なんぞに向かうC級サオ師を、なんの差別もなく集合場所に運んでくれる。
こちらはそろそろ居眠りモード。地の底を揺らす機械音はまったく勤勉。なにか悪いことをしているような、放課後の教室。いまから授業を受けようにも世間一般という永久学校からとっくに除籍させられてる自分だ。抜けられる校門までそろそろ着いてくれてもよさそうなものを・・・。

六本木だ。何年ぶりか。覚えているのはスタジオではなく、いつもパブだのクラブだのを借りての撮影であること。今日もそうで、結局一番ありふれた場所、アマンド前から電話することになっている。
まだ少し早い。ガラス越しの若い女ふたりの視線、動物園じゃないぞ、細長い花壇に腰かけようとするとさっそく白人黒人、無国籍女の群れまた群れ。
じっとしていると日本語さえ判別できなくなりそうな空気にうんざりして、周囲を見渡す。本、という大きな文字に吸い寄せられて近くのビルをくぐる。

いきなりただっ広い照明の下、近所の書店でもコンビニでも見かける表紙の波に少しホッとする。と、スーツ姿でやたら咳を連発する男。夏カゼはとうとう半月以上もしつこかった。もう御免だ。遠周りしてサブカルチャーコーナーから雑誌の棚へ。でもやはり追い掛けるような咳の唸りにそそくさと店外に逃げてしまうしかない。
薬局のチェーン店に入る。全国どこでも同じ造り。ここだけ外とは別世界だ。でも目当ての品は見当たらず、足を止めるには狭過ぎの、立ち読みならぬ立ち選びにはいささか無理のあわただしさ。ここも時間をつぶさせてくれる場所にはなり損ね、早くも困った街だ。

元のアマンド前で携帯プッシュ。ところが通じているのにお互いに聞こえていない。多分こちらの古電話のせいだ。これまでも何度か脈絡もなく役に立たなくなった。そろそろ買い換え時か。面倒臭い、頭が痛い。
幸い迎えはすぐ来てくれた。突然湧いて出たような作り笑顔ふたつ。夜も盛りの歓楽街を先導してもらってフラフラ歩く。
なんという外国人の多さ。集まりまくった図体のデカさ。女はやはり民族不詳。剥き出しの肌は影で覆われ、タトウーと原色とブランドで装飾された妖しい漂い。
男の体格、女のフェロモン。広くない歩道は完璧なケモノ道、それとも先端風俗界のジャッジメントロード。

欲望の街だった。それも歌舞伎街や渋谷とは一味違う。ドブの匂い、汚物の異臭、粘液臭さ、あるいは餓鬼たらしの安っぽさ、ファーストフード的な油っこさ、ジュースっぽいチャチな甘美もどき。いずれも感じ取れない。
なにより性を反吐する自虐とお手軽な倒錯、青っぽい無軌道で自堕落なエネルギーが、ここには無い。
セレブだ。
外人も正装まみれも、我が物顔の車道に高速も。店は堅固な城壁構え。街全体が汚れも乱れも許さぬ厚化粧。駆除も除菌も無縁のままに、消臭剤と執拗な上塗りで処理しまくったスキのない完璧な虚飾ゾーン。
無言の18禁でバリヤし、フルコースとワインで愉悦のディナーを堪能させようという苦味に満ちた大人の高級自足。

そして辿り着いたはハプニングバーだ。
「懲りない男優、二人目の御用、ハイ、そこまで!」
なんて妄想に遊びながら、エレベーターは7階へ。ジャージ、サンダル禁止の但し書き。
扉を引けばまだある小部屋で入店チェック。もちろん我々撮影隊はフリーパスだがスタッフ揃って超の字を付けたくなる低姿勢。あくまで撮影という免罪符でのみ許された今の身分。いつ強制退去のスタンプを押されるか、薄暗がりでビクついていたのは、まあ僕くらいのことだろうが。

撮影はすぐ終わった。簡単な芝居とわずかのサービス。本編のオマケに近い追撮だから、あっけないくらいが丁度いい。気になったのは闇のカウンターから漏れる芝居ではないしゃべり声。なにあれ?へぇー。見たい。見たいよねぇ。
見たい聞きたい、はこっちだった。ホステスなのか客なのか、ドレス女の隣にはなぜか上だけ裸の男がいて、カップルのようなグループのような固まりが陣どっていては、女はやはり際どい衣装、ひとりポツンの眼鏡のオタク、妙に多いバーテンは目立つくらいにニヤケッぱなしで、飲んでいるのか、たくらんでいるのか・・・。
いきなり彼等全部がワッと早変わりして怒濤のヨソ者狩りを始めてしまいそうなプチやば、の香り。壁に並んで掛けられたボンテージ風のコスプレ、クイーンのマスクの壁飾り、奥に用意された天井から下がるチェーン、四角いオリ。不気味にステージモード。
以外にシンプルな内装とは言え、一応は二重扉、せせこましい通路、取り囲めそうな白服黒服。
カウンターを挟んで半分が背を向け、半分が歪んだ瞳と唇を向ける出来過ぎたディスプレイ。いっそ、ハイ、そこまで!の声を初めてなのに懐かしむように求めてしまいたくなるのは、やはり僕ひとりだったようだが。

店長から全員一杯ずつ御馳走になった。デップリした貫禄でアナルマニア。今度電流バイブを通常の倍のボリュームで試すつもり、と立ったまま喜々としてしゃべっている。500ボルトはアブナイでしょう、の声に、死んでも香典だけでひと財産、ウチのチェーンならそれくらいになる、と死を賭けた?事業披露。
以外におとなしいですね、と誰か言えば、いやまだ大人のノリだけどもうそろそろ・・・
裸男の話しが弾んでいる。女たちの動きもあちこちに散りはじめたような、オタク氏も端っこの席でなにやら準備か。我々はいい加減、退散の時間・・・。

バーの住人たちは皆セレブかセレブ予備軍だ。僕が最も敬遠するタイプ。
しかし彼等には何の迷いもない。完全に慣れ切っている自分達の位置がある。
それは我々の側にあってもそうで、馴染みらしい監督は余裕の受け答え、クラブ通いの女優もすんなり溶け込んでみせている。
監督はこれからもう一軒別の店に顔を出してから事務所に戻って朝まで編集。
女優も朝から富士五湖まで行っての撮影。
店長やバーテンも徹夜勤務だろうし、客達にもひとりとして明日は完休なんて気楽な者はいないだろう。
途方もなくお気楽なのはやっぱり僕だけ。
彼等の日々の戦いに裏打ちされた強さ、ゆとり、傲慢、ハメ外し、背徳・・・。
僕は店内でまともにしゃべれなかった。すいません、とかお疲れさまとか、当たり前の言葉がしどろもどろで、とことん社交吃音だった。
普段いかに戦っていないか。
案の定カメラを向けられている時だけ、悠悠と大人だった。笑いも態度も恐い物無しの、選ばれた人間だった。
VDのなかでしか格闘してこなかった奴と、24時間常在戦場の人々。

僕は確かに戦う気はない。リングに近寄らない人生を無意識のうちに選択して44年を生きた。その間にこの街は、ここの住人は、六本木民族は、欲望を巡る果てしないサバイバルウォーを生き抜き、不沈艦の原野を築いた。

僕は悔いてなどいない。ただ突然カウンターの側で言葉を失い、スーツで固めた夜の親方や兵隊たちに一言も自然な返事を返せなかった脆弱、いや腰抜けぶりに唖然として自失してしまっただけだ。
逃げるようにすら帰れなかった。その信念さえ奪われて、まるで六本木に呑み込まれたままバーテンに案内されるがごとく、元の交差点の前まで僕も無国籍人の足取りで運びこまれた。あとはとにかく地下鉄口へ、暗い彼方へ、降りて降りて脱国したのだ。

僕がいた3時間の六本木。これが24時間になれば僕も強くなれるのか。
無駄な話しだ。もう自分の世界に慣れ切って、溺れ切って、沈みかけている。
お互い好きに生き、好きに死のう。
どんな栄えた都も、いつか・・・・。
僕には関係ない。




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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
お仕事、大変でしたね、お疲れ様です。
私のほうは何とか大丈夫、勉強も、就職活動も、復職活動も、いろいろ
やってないとね。
来年の1月までに薬もためなきゃ。
でも、本当に死ねるかわからない。
こんな分際の私。。。

また、来ますね。生きてるうちは、来ますね。
きらら
2005/08/17 23:20
ありがとう。なんとなく久々のような青空です。
分際・・・お互い死のう死のう、なんて思ってる分際ですね。
どんな分際でも死ぬ時は死にます。でも生きる時は嫌でも生かされます。
理不尽ですね。それも含めてのちっぽけな分際。
いまはかろうじて、そんな自分の分際を、自分だけでも愛してやりましょう。
生きてるうちは・・・・。
ありがとう。
辻丸耕平
2005/08/18 14:05

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